都内の片隅で、中堅の不動産屋「真不動産」が営業をしていた。そこでは、事故物件をリーズナブルな価格で取り扱うことで、生計を立てていた。社長の佐藤は、新たに入手した物件の内見を、新米の従業員・田中に任せることにした。
「これがその物件の鍵だ。まずは、中の様子や間取りを確認してきてくれ。」
田中は首を縦に振り、物件のある住所に向かった。鍵を開けると、微かに冷たい空気が流れてきた。部屋に足を踏み入れると、前の住人の家具がそのままになっていた。何となく時間が止まっているような静寂が部屋に充満していた。
1階を見終えた田中は、2階へ向かった。そこで、彼は不思議なことに気づく。提供された間取り図にはない、狭い階段が続いているのを発見した。好奇心に駆られた田中は、恐怖心を押し殺して、階段を上った。
階段を上りきった先には、1つの部屋が存在していた。部屋の扉を開けると、真っ赤な壁が目に飛び込んできた。そして部屋の中央には、仏壇がひとつ。一見、普通の仏壇だったが、田中が部屋に入った瞬間、扉がゆっくりと開き始めた。
田中の足が凍りついた。仏壇の中からは、何も出てこないが、田中の目の前には、数々の写真が並べられていた。その写真には、様々な表情の人々が写っていたが、彼らの共通点は、全員が真っ赤な部屋で撮影されていることだった。
急に、背後から冷たい手が田中の肩を掴んだ。振り返ると、前の住人と思われる老女が立っていた。彼女は微笑みながら言った、
「ようこそ、我が家へ。」