真木は趣味でアンティークの時計を集めていた。ある日、古びた小さな質屋で、特に古そうな掛け時計を見つけた。店主は真木に近づき、その時計を指さしながら警告して言った。「あの時計は特別だ。気を付けてくれ。」
真木は興味津々でその時計を購入し、自宅のリビングの壁に掛けた。しかし、その夜から異変が起こり始めた。真夜中の12時になると、時計の音が異常に大きくなり、その音が家中に響き渡った。
日に日に時計の音は大きくなり、そして、ある夜、真木は目が覚めるとリビングに不気味な光が漏れてきていた。恐る恐るリビングに足を運ぶと、時計の針が12時を指し、その時計からは赤く染まった液体が滴り落ちていた。
真木はこの異常事態に気付き、すぐに時計を質屋に返そうと決意した。翌日、質屋へと向かった真木は、店主に事の経緯を話し、時計を返そうとした。しかし、店主は慌てたの表情で言った。「それは出来ません。やっと解放されたのに・・・」
真木は慌てて家に戻り、時計を外してゴミ箱に捨てた。しかし、その夜再び時計の音が鳴り響き、真木は目が覚めると、再びリビングの壁にはその時計が掛かっていた。
彼は完全に恐怖に打ちのめされ、友人や専門家に相談を求めたが、どうにも解決の糸口はつかめなかった。そして、ある夜、真木は再び時計の音で目が覚め、今度は自分の部屋の壁にその時計が掛かっていた。
その瞬間、時計の音は耳をつんざくような大音量となり、真木はそれに耐えきれず、気が狂ってしまった。そして、彼はその時計の中に自らの命を絶ってしまった。
翌朝、真木の姿を見かけないことに心配した隣人が警察に通報。警察が家に入ると、リビングの壁に掛かった時計の下で、真木の遺体が発見された。時計の音はその場で止まり、その後、その家には誰も住むことはなかった。
質屋の店主は後日、この事について訊かれた時、深くため息をつきながら言った。「その時計は、かつて自ら命を絶った者の魂が宿っている。真木さんは、その魂に取り憑かれたのだろう。」