雨が降る町、東京の片隅に古びたアパートが立っていた。町の人たちはそのアパートには地下室があると囁いていたが、そこに住む者はなかった。新しい入居者が現れると、必ずと言っていいほど、数ヵ月で引っ越してしまうという。
ある日、大学生のカズヤがそのアパートの部屋を借りた。彼は友人たちに「ここは家賃が安いし、大学も近いんだ。」と話していたが、真相は彼が地下室の噂に興味を持っていたからだった。
「本当に地下室があるのかな?」と興味津々で彼はアパートの管理人に尋ねると、管理人は不機嫌そうに「そんなものはない」と答えた。
しかし、ある晩、彼はアパートの廊下に小さなドアを見つけた。それは以前にはなかったドアだ。ドアの前に立つと、冷たい風が漏れてきて、彼の心はドキドキと高鳴った。
「これが噂の地下室か…」と彼は思った。彼は勇気を振り絞り、ドアを開けた。
地下室の中は真っ暗で、湿った匂いが充満していた。彼は懐中電灯を持って進むと、奥に小さな部屋があり、中央に大きな木の箱が置かれていた。彼は恐怖と興奮の入り混じった気持ちで箱の蓋を開けた。
中には大量の日記帳が収められていた。彼は一冊を手に取り、中を読み始めた。
「2021年5月5日。彼はまた私を地下室に閉じ込めた。もう耐えられない。」
日記は過去の住民たちが書いたものだった。彼らは何者かに地下室に閉じ込められ、飢えと寒さで亡くなったのだ。カズヤはその真実を知り、恐怖で震えた。
彼は地下室から逃げ出し、アパートを出ると、管理人が彼の前に立っていた。「お前も知りすぎたな」と言って、彼に迫ってきた。
カズヤは恐怖で声も出せず、ただ足を使って必死に走った。彼はその後、アパートから逃げ出し、二度とそこには戻らなかった。
そのアパートは後に取り壊され、地下室の存在も忘れられていった。しかし、カズヤだけはその恐ろしい真実を知る者として、その後の人生を過ごすこととなった。