【怖い話】心の欠けた部屋

短編の怖い話



新しく一人暮らしを始めることになった瑞穂は、築30年の古いマンションを見つけた。一カ月の賃料が異常に安かったので、学生の彼女にはうってつけの物件だった。引っ越しの日、大家さんから「この部屋、瑞穂さんが入る前、心理的瑕疵物件だったことを知ってるか?」と尋ねられた。瑞穂は「知ってる。でも大丈夫です」と答えた。実際、前の住人が事件により亡くなったことを彼女は知っていた。

最初のうちは特に問題はなかった。しかし、ある晩、瑞穂はリビングの壁から奇妙な音を聞いた。壁を打つような音、そして男のうめき声。瑞穂は恐怖に身をすくめ、翌日大家さんにそのことを話した。

「そうか、やっぱり…」大家さんは重い口調で言った。「前の住人、彼は壁の中に殺してしまった妻の遺体を隠していたんだ。」

瑞穂は驚きのあまり、言葉が出なかった。その夜、彼女は再びその音を聞いた。そして、今度は部屋の真ん中に立つ女の姿を見た。彼女は瑞穂に手を差し伸べ、「助けて」と囁いた。

翌日、瑞穂はその部屋を急いで出て行った。しかし、彼女の精神は既に壊れており、その後彼女は病院に入院。彼女の心は、あの部屋の暗い過去とともに、永遠に失われてしまった。

それ以降、そのマンションは誰もが近づかない「呪われた部屋」として恐れられるようになった。そして、部屋の中では今も、壁の中からの打つ音と、助けを求める女の囁きが絶えることはなかった。



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