田舎の小さな村に、由緒ある古い祠があった。祠の前には、大きな石碑が立てられ、その石碑には数枚の古びたお札が貼られていた。村の人々は祠を敬う一方で、その近くには決して近づかないという不文律があった。
ある日、都会からの若者グループが、夏の冒険心からこの村を訪れた。村の風景や伝統を楽しむ中で、彼らはその古い祠の存在を知った。好奇心から祠を訪れることに決めた彼らは、村人からの忠告を無視して、祠の前に足を運んだ。
祠の前に立つと、何とも言えない荘厳な空気が流れていた。しかし、その中でも一番目を引いたのは、石碑に貼られたお札だった。お札は古びてはいたが、その中央には鮮やかな赤い印が押されていた。
若者の一人、慎吾は、お札に興味を持ち、一枚を手に取ってしまった。彼はそれを冗談半分で持ち帰ることに決め、友人たちも特に止めることはしなかった。
その夜、慎吾は宿泊先の部屋で不安定な呼吸を繰り返す夢を見た。夢の中、彼の周りには無数の影がうごめいており、彼の名前をささやいていた。目を覚ました慎吾は、自分の首に冷たい何かが触れていることに気付いた。それは、手に取ったお札だった。お札は自ら動いて、慎吾の首を絞めていた。
彼は必死にお札を取り払おうとしたが、お札は離れようとしない。部屋の中で彼の叫び声が響き渡った。
友人たちは慎吾の部屋に駆け込み、お札を引き剥がそうとしたが、それは簡単にはいかなかった。数人がかりでようやくお札を取り払い、部屋の外へ放り投げた。
次の日、慎吾たちは村を後にすることに決めた。祠にお札を戻そうとする慎吾の手に、再びそのお札が現れた。彼はお札を石碑に戻し、村を去ることを誓った。
村を離れた後も、彼らの心の中には、あの夜の恐ろしい出来事が刻まれていた。お札の力を甘く見てはいけないこと、そして伝統を軽んじてはならないことを痛感させられた彼らは、都会に戻ってからも、その教訓を忘れることはなかった。