【怖い話】残された1人

短編の怖い話



新しい町への転校初日、由紀子はクラスで唯一の席として指された後ろの席に座った。彼女の前の席には、清潔感のある制服を着た少女、綾乃が座っていた。由紀子はすぐに彼女と打ち解け、学校生活が始まった。

しかしある日、綾乃が学校に来なくなった。先生やクラスメイトに問いかけても、彼女のことを知らないという答えばかり。由紀子は混乱した。彼女との会話や思い出は、すべて嘘ではないはずだった。

放課後、由紀子は綾乃のお気に入りだった屋上に足を運んだ。そこで彼女は古びたアルバムを見つけた。開くと、中には多くの写真が収められていた。その写真の中に、綾乃の笑顔が映し出されているものもあった。そして、アルバムの最後のページには、10年前のクラス写真があった。綾乃はその中にいた。

由紀子は学校の過去の事件について調査し始めた。そして、10年前に屋上から飛び降りて亡くなった少女がいたことを知った。その少女の名前は、綾乃だった。

由紀子は理解した。彼女が「残された1人」であり、綾乃は彼女に何かを伝えるために姿を現していたのだ。由紀子は綾乃のため、そして彼女自身のために、学校の過去の闇を明らかにする決意を固めた。

数日後、由紀子は学校の図書室で綾乃に関する新しい情報を見つけた。綾乃は当時、いじめを受けていた。しかしその詳細は曖昧で、正確な理由やいじめた人たちについては記されていなかった。

由紀子は綾乃の友人だったかもしれない卒業生たちに接触を試みるが、多くは話すことを避けていた。しかし、ある卒業生、智恵が由紀子に事の真相を語り始める。

「綾乃は皆に愛される素敵な子だった。だけど、彼女には秘密があった。それを悪気なく話した私が、彼女の運命を狂わせてしまった。」

由紀子は聞き入れ、その秘密を知る。綾乃は超常的な力を持っていた。その力で友人たちの未来を予知し、危険を回避させていた。しかし、その力を知った数人の生徒たちが、自分たちの未来を知りたいと圧力をかけるようになった。綾乃が未来を教えないと、彼女は日常的ないじめを受けるようになった。

綾乃の力で未来を変えることはできないことを知った智恵は、彼女に「未来を予知しないように」と頼んだ。しかし、いじめはエスカレートし、綾乃は屋上からの飛び降りを選ぶこととなった。

由紀子は綾乃のために真実をクラスに知らせることを決意した。学校の全員の前で、綾乃の事実を明らかにし、彼女の名誉を回復させた。綾乃の霊は由紀子の夢に現れ、「ありがとう」と微笑んで消えていった。



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