新居への引越しを終えた鈴木家。新しい生活の喜びとともに、家の掃除をしていると、前の住人が残していった大きな絵画がリビングの壁にかけられていた。その絵画は町の風景と、その中を歩く人々を描いたものだった。
最初の数日は何も気にならなかったが、ある日、娘の美穂が「この絵、前と違うよね?」と言い出した。絵の中の風景が前よりも一歩前に進んでいるように見えた。当初は気のせいかと思っていたが、日に日に絵の中の人々や風景が動いているのが明らかになってきた。
さらに、街を歩いていると、絵に描かれていた風景や人々を現実で見かけるようになった。特に、絵の中心に描かれていた老人は、町の公園で毎日ベンチに座っているのを見かけるようになった。
鈴木家の家族は絵画の異変に気づき、絵を取り外そうとしたが、どうしても外れなかった。絵の中の風景が現実にどんどんと溶け込んできて、町の人々もその異変に気づき始める。
ある夜、鈴木家のドアを叩く音がした。ドアを開けると、絵の中で見かけた老人が立っていた。老人は、「私を絵の中に戻してくれ」と頼む。彼はかつて、この絵に封じ込められた魂の一人で、絵の力が弱まると現実に出現するという。
鈴木家は町の霊能者を頼りに絵画の謎を解明しようとするが、霊能者は絵を見るなり「この絵は呪われている。早く町から追い出すべきだ」と言い、体調を崩してしまう。
最終的に、町の人々と協力して絵を町の外へ運び出し、焼き捨てることに。炎の中で絵は黒煙とともに消えていったが、その後も町には絵の中の人々や風景の面影が残り続けることとなった。