田村は都市伝説好きの大学生だった。ある日、友人たちと「Iトンネル」の噂を話題にした。トンネル内で事故が多発し、夜になると泣き声や足音が聞こえるという噂が立っていた。
「行ってみるか?」ということになり、田村たちは夜のトンネルを目指した。彼らがトンネルに到着すると、何となく重苦しい空気が漂っていた。トンネルの入口には古びた花束が置かれており、何者かが慰霊のために来ていたことを示していた。
彼らは勇気を振り絞り、トンネルを歩き始めた。トンネルの中は薄暗く、遠くから聞こえる水滴の音が響き渡っていた。すると、彼らの耳に泣き声が届いた。それは女性の声で、非常に悲痛なものだった。
「聞こえる…?」と田村は友人たちに確認すると、彼らもまた同じ声を聞いていた。彼らは声の方向へ進むことにした。
進むうち、彼らは古びた新聞の切り抜きを見つけた。それによると、数十年前にこのトンネルで大きな事故があり、多くの命が失われたことが記されていた。事故の原因はトンネル内の工事に起因するものだった。
泣き声は徐々に大きくなり、彼らはついにその声の源を発見した。トンネルの中央には、事故で亡くなったと思われる女性の霊が立っていた。彼女は田村たちをじっと見つめ、突如として彼らに向かってきた。
田村たちは怖さのあまり逃げようとしたが、足が震えて動けなくなってしまった。女性の霊は彼らの前に現れ、涙を流しながら「なぜ救ってくれなかったの?」と叫んだ。
その瞬間、トンネル内は真っ暗になり、彼らの耳には事故当日の叫び声や衝突音が聞こえてきた。そして、明るくなったとき、田村たちは彼ら自身が事故の現場となったトンネル内に横たわっていた。
翌日、田村たちが行方不明になったというニュースが流れた。警察は彼らの最後の足取りを追ってトンネルを調査したが、彼らの姿はどこにもなかった。しかし、トンネルの中央には新しい花束と共に、田村たちの写真が置かれていた。
以後、Iトンネルは通行禁止となった。しかし、夜になると田村たちの笑い声や足音がトンネル内で聞こえてくるという噂が立ち、多くの人々を恐怖のどん底へと引き込んでいった。