【怖い話】I村の迷子

短編の怖い話



都会から遠く離れた場所に、I村という忘れられた村があった。この村はかつては栄えていたが、ある事件を境に人々は去り、今は無人の廃村となっている。村の名前の由来は、夜な夜な犬の遠吠えのような声が聞こえることから名付けられたと言われている。

大学の休みを利用して、ケンタとアユミは都市伝説の探訪を趣味とする友人たちと共に、このI村を訪れることになった。彼らは心霊スポット巡りを楽しみながら、その真実を追い求めるのが好きだった。

村に到着した彼らは、古びた家々や放置された道具たちを興味津々で見て回った。夕方近く、彼らは中央の広場にたどり着いた。広場の中央には大きな井戸があり、その周りでは昔の住人たちが集まって交流していたのだろうと想像した。

アユミは好奇心から井戸の中を覗き込んでみると、遠くの深さから女の子の泣く声が聞こえてきた。「誰か、助けて…」という声だ。

彼らは驚き、急いで井戸の口を覗き込んだが、真っ暗で何も見えなかった。そして、突如としてその声は止み、代わりに犬の遠吠えのような声が響き始めた。

恐ろしくなった彼らは、村を後にすることを決意。しかし、出口までの道がわからず、どうしても村から出ることができなかった。どこを歩いても、同じ場所に戻ってくるかのように感じられた。

夜が更けると、再び女の子の泣き声が響き始めた。今度は村のあちこちから聞こえてきた。彼らは必死にその声の方向へと向かったが、どこに行っても声の主を見つけることはできなかった。

そして、彼らが広場に戻ると、井戸の中から手が伸びてきた。それは枯れた手で、彼らを引きずり込もうとする力強さを持っていた。

アユミはその手に掴まれ、井戸の中へと引きずり込まれた。ケンタたちは彼女を救おうとしたが、とうとう彼らもその手に掴まれ、闇の中へと消えていった。

翌日、別のグループが犬鳴村を訪れると、広場の井戸の中から彼らの遺体が見つかった。そして、その夜、彼らの声が犬の遠吠えと共に、I村に響き渡った。



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