​【怖い話】病院の廃病棟

短編の怖い話



私は大学病院の研修医として働いていた。その病院には昔使われていたが、現在は使われていない廃病棟があった。ある夜、先輩医師から、そこの廃病棟にある古い医療機器を取りに行くよう命じられた。

不安な気持ちで廃病棟に足を運んだ。中は暗く、廃墟のような雰囲気だった。廃病棟の奥へ進むと、古いベッドや医療機器が放置されていた。そして、その中で私は一枚の古い写真を見つけた。写真には、笑顔の女性患者と、私がよく知る先輩医師の姿が映っていた。しかし、その写真は30年以上も前のものだった。

驚いた私は、その写真を手に先輩のところへ戻った。「これ、何ですか?」と尋ねると、先輩は暗い表情を浮かべた。

「あの女性、彼女はかつてこの病院に入院していた患者だ。彼女は不治の病に冒され、最後はこの廃病棟で息を引き取った。」

先輩の話によると、彼女は生前、病気で苦しんでいたが、いつも明るく笑顔を絶やさなかったという。しかし、彼女の最後の日、突然彼女の笑顔は消え、恐怖に震えるようになったという。

「ある夜、彼女は私に『ここには私以外の誰かがいる』と言い始めた。私は彼女の幻覚と思い、気にしていなかったが、彼女の死後、その廃病棟で奇妙な現象が起きるようになった。」

それから、廃病棟では何度も奇妙な音が聞こえたり、医療機器が勝手に動き出すことがあったという。

私は不安な気持ちで、再び廃病棟に足を運んだ。すると、奥から女性の声が聞こえてきた。「誰か、助けて…」私は声の方向へ進むと、彼女の姿を見つけた。彼女はベッドに横たわり、私を見つめて微笑んでいた。

その瞬間、彼女の背後にもう一人の女性の姿が現れた。その女性は彼女の手を握り、二人は消えていった。

その後、廃病棟での奇妙な現象はなくなった。私は先輩にそのことを話すと、先輩は微笑みながら言った。「彼女は、やっと安らかになれたんだろう。」

しかし、私はその後も、夜中に廃病棟から聞こえてくる、女性の笑い声を耳にすることがあった。



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