大学を卒業し、新しい町での仕事を見つけたマサト。新生活を始めるために、不動産屋で紹介されたアパートの一室を契約した。家賃も安く、場所も便利で、すぐに気に入った。
入居日、彼は友人たちと一緒に引っ越しを始めた。大半の荷物を部屋に運び込んだ後、移動ベッドを置くためのスペースを確保するために、部屋に添え付けのあった古びた箪笥を移動させた。
その時、マサトは箪笥の後ろの壁紙に見慣れないお札を発見した。黒い文字で何やら呪文のようなものが書かれており、一見するとお守りのようなものだった。マサトは「前の住人の忘れ物かな?」と思い、とりあえずそのままにしてベッドを置いた。
しかし、その夜からマサトの部屋で不可解な現象が続発することになった。夜中、窓やドアのノブが勝手に開いたり閉まったりする音がし、水道の蛇口がひとりでに開き、水が流れる音が聞こえてくる。さらに、毎晩、彼が耳にするのは、彼の名前を呼ぶ女の声だった。
一晩、彼はその声に従い、部屋を出て階段を下り、アパートの敷地内の古い井戸のところまでたどり着いた。井戸の中から、彼を引き込もうとする何かが感じられた。
翌日、マサトは不動産屋にその現象について問い合わせた。不動産屋の担当者は顔を青くして、「そのお札を外してはいけませんでした。前の住人も同じ現象に悩まされ、精神を病んでしまいました。お札は、古井戸で亡くなった女の霊を封じ込めるためのものだったんです」と告げられた。
マサトはその日、アパートを急遽引っ越した。新しい住まいでも彼は毎晩、名前を呼ぶ女の声を聞くことになった。お札を無視した彼の運命は、もはや変えられないものとなっていた。