【怖い話】迷子の館

短編の怖い話



新婚の夫婦、浩史と陽子は、ハネムーンで田舎の温泉地を訪れることになった。だが、道に迷ってしまい、夜になってしまった。2人は心細くなりながらも、山道を進んでいった。すると、霧の中にぼんやりと古びた館が見えてきた。

館の入り口には「宿泊可」と書かれた看板がかかっており、夫婦は一晩泊まることにした。中に入ると、美しい女性が応対してくれた。彼女は「お待ちしておりました」と微笑んで2人を部屋へ案内した。

部屋は清潔で、古びたが豪華な調度品で飾られていた。だが、夜中になると、廊下や階下から奇妙な足音や笑い声が聞こえてきた。浩史は「古い館だから音が響くんだ」と陽子を安心させた。

だが、陽子は何かが気になって眠れなかった。ベッドのすぐ横の窓から、館の庭を眺めていると、多くの影がダンスを踊っているように見えた。霧に煙る中、影たちの顔が見えてきた。その顔たちは火傷を負ったように赤く変色しており、痛々しく歪んでいた。

陽子は恐怖で身を震わせ、浩史を起こそうとしたが、彼の横顔も火傷のような跡が広がっていた。そして、彼の目は死んだ魚のように冷たくなっていた。

陽子は悲鳴を上げて館から逃げ出そうとしたが、廊下には火傷を負った顔の人々が立ちはだかっていた。彼らは「ここを出ることはできない」と囁いてきた。

陽子は逃げ惑いながら、館の裏手にある小さな祠を見つけた。祠には館の火事で亡くなった人々の写真と名前が飾られていた。その中には、浩史の写真もあった。

翌日、近くの村人が館の前で車を発見し、中を調べると陽子の遺体が見つかった。館の管理人によれば、その館は50年前に火事で全焼し、多くの人々が命を失っていた。そして、火事の前日に宿泊した新婚夫婦も犠牲となったという。



短編の怖い話

ABOUTこの記事をかいた人

怖い話.com

怖い話が好きでブログ更新してます。 オカルト、怖い話、ホラーのジャンルが好きな方にオススメのブログです。