都会の一角にあるアパートの一室で、若きサラリーマン・真也は毎夜のように金縛りに見舞われていた。最初は寝不足だと思っていた真也だったが、金縛りが続くにつれ、それには何か理由があるのではないかと感じるようになった。
毎夜、真也が目を覚ますと、部屋の隅に見知らぬ老婆が立っているのだ。その老婆は、真也をじっと見つめながら、近づいてきて、彼の胸の上に座り込んでいた。真也は動くことも、叫ぶこともできず、ただ金縛りに苦しむしかなかった。
次第に、老婆の姿は明確になり、彼女が毎夜真也に囁く言葉も聞こえるようになった。「私の場所を返せ」と、繰り返し囁かれる真也は、その言葉の意味を理解できず、ただ恐怖を感じていた。
ある日、真也がアパートの管理人のおばあちゃんに、部屋の前の住人について尋ねると、彼女は一瞬、驚きの表情を見せた。数十年前、その部屋で老婆が孤独死を遂げ、数週間後に発見されたという。真也の部屋は、その老婆の「場所」だったのだ。
真也は部屋を変えようと考えたが、賃貸の契約や仕事の関係で、すぐには部屋を変えることができなかった。彼はお祓いを受けることにした。
神主が真也の部屋でお祓いを始めると、部屋の中に冷たい風が吹き、窓ガラスが震え始めた。神主は厳しい面持ちでお経を読み上げ、真也はただ震えながらそれを見守っていた。
お祓いが終わり、神主は真也に言った。「こちらは出来る限りのことをしました。しかし、彼女は強くこの場所に執着しています。安全を考えるならば、早めにこの部屋を出ることをおすすめします」と。
その夜、真也は眠れずにいた。深夜、部屋の隅で老婆の姿が見えた。老婆は真也のベッドの方向にゆっくりと歩み寄ってきた。そして、彼の胸の上に座り込むと、真也の顔をじっと見つめて言った。「私の場所を返せ」と。
次の朝、真也は動かずベッドの上で見つかった。彼の顔は青ざめ、目は恐怖で大きく見開かれていた。真也の部屋の窓の外からは、老婆の笑い声が聞こえてきた。