静かな夜、拓海は仕事を終えて帰宅する途中だった。彼が住むマンションは10階建てで、彼は5階に住んでいた。とはいえ、このマンションには縁起の悪いとされる4階は存在していない。
エレベーターの扉が開くと、彼はいつものように5階のボタンを押した。1、2、3…と、エレベーターは昇っていく。しかし、次の瞬間、彼は何か違和感を感じた。エレベーターが停止した階の表示には、あるはずのない「4」という数字が映し出されていた。
驚きのあまり、拓海はふとエレベーターのボタンを見ると、存在しないはずの「4階」のボタンがちゃんとあることに気がついた。彼は興味と恐怖の入り混じった気持ちでそのボタンを押す決断をした。
エレベーターの扉が開くと、視界は漆黒の闇で包まれていた。照明が一切ない中、遠くの方でほんの一瞬、キラリと光るものが見えた。その光が驚異的なスピードで彼に向かって来るのを感じ、拓海は背筋が凍るような恐怖を覚えた。光が明瞭になると、包帯で顔を巻いた男が刃物を振りかざしながらこちらに突進してきたのが確認できた。
拓海は必死でエレベーターの閉じるボタンを押し、ほんの一瞬のうちに扉が閉まった。しかし、その一瞬の間に、その男の手が扉の隙間に入り込み、彼の顔が近づいてきた。「見たな?」とその男は低く、冷たい声で囁いた。
翌日、拓海はマンションの管理人に4階のことを問いただすと、管理人は顔色を変えて言った。「あの…4階は、以前大きな事件があったため封鎖されているはずです。そこには、絶対に入らないでください…」