都会のアパートの一室に住むサトミは、幼いころから夢の中で見る奇妙な光景に悩まされていた。それは古びた日本家屋の庭で、自分が着物を着ている自分の姿と、泣き叫ぶ赤ん坊が映し出される夢だった。サトミはその赤ん坊を必死で守ろうとするが、夢の中で常に追いかけられる恐怖に駆られる。
ある日、サトミは地元の歴史に興味を持ち、図書館で古い文献を読みふけっていたとき、その夢の風景に似た古い家の写真を見つけた。写真の裏には「昭和初期、○○家」と書かれていた。興味を引かれたサトミは、その家の場所を調べ、一人で訪れることに決めた。
家は草に覆われ、老朽化していたが、その庭や間取りはまさに夢の中のものと同じだった。心臓が高鳴る中、サトミは家の中を探索し始めた。奥の部屋で、サトミは黒く焼け焦げた古い手紙を見つけた。それは、昭和初期のある女性からの遺書だった。
「私はこの家で生まれたばかりの娘と共に、後を追うことを決意しました。夫の不義と町の噂に耐えられず、私たちはこの世を去ります。次にこの家に足を踏み入れる者へ、私たちの魂が安らぐよう、祈りを捧げてください。」
サトミは手紙の内容に震え、家の奥の部屋に向かった。すると、部屋の隅に小さな仏壇があり、そこには女性と赤ん坊の写真が飾られていた。驚くべきことに、その女性の顔は、サトミの夢の中の自分と瓜二つだった。
その日以降、サトミは夢を見ることがなくなった。しかし、彼女は自分がその家の女性の生まれ変わりであることを強く感じ、家を修復し、仏壇をきちんと手入れすることに決めた。そして、ある晩、サトミが仏壇の前で手を合わせていると、女性と赤ん坊の霊が微笑みながら彼女の前に現れ、「ありがとう」と囁いて消えていった。
サトミは過去の自分との繋がりを感じながら、その家で新しい生活を始めた。過去の悲劇を乗り越え、新しい人生を歩むことを決意したのだった。