【怖い話】異世界の自宅に行ってしまった話

短編の怖い話



これ子供のころに体験したことなんだけど…。
親の仕事の関係で転勤になって、新しい土地に慣れてなくて1人で外で遊んでた時に体験した話。
うちの親自営業で共働きだったんだけど、近くに親戚とかいなくてさ。託児所みたいなとこもなくて、一応幼稚園のお迎えは母親が来てくれたんだけど、帰宅後はほとんど放置状態だったんだよね。
自営ってこともあって、夕飯はよそのうちよりも遅くて早くても20時くらいだったもんで、暇つぶしで外をふらついていることがよくあったんだ。

あの日も母親が迎えに来て、帰宅途中に食材買いに近くのスーパーに寄ったくらいで家についてからすぐおやつ出されて放置されたんだよね。
母親は仕事があるからって、すぐ家でていっちゃってさ。
でもそんな環境も慣れっこだったから、おやつ食べてから外に遊びに出た。
引っ越しして1ヵ月くらいだったんだけど、まだ周囲になじめなくて遊べる友達もいなくて。
6月頃で、近くに林があったから昆虫採集でもしようと虫取り網と虫かごを持って出たんだ。
林道までは10分くらいなんだけど、途中坂道の下を通る小さな歩行者用のトンネル通るんだけど、ここ子供の足だと5分くらいかかる長さなんだよね。
薄暗くてちょっとだけ不気味だったのを覚えてる。
林道の少し奥まったところに行くと小川もあったんで、いろいろと面白くて気が付いたら周囲が薄暗くなってそろそろ帰らなきゃなぁって、慌てて自分ちに帰ったの。

そしたらさ。
いつも出迎えなんかないのに、この日は母親が玄関先にいたんだけど物凄い形相で立ってたんだよね。
いつも穏やかで滅多に怒るなんてことないのにさ、「どこほっつき歩いてたんだ!」って怒鳴られて、小突かれた。
なんかすごいカリカリしてて、ヒステリー起こしてる感じで怖くてひたすら謝るしかできなかったんだけど。
オヤジはいつも仕事で夜中に帰ってくること多かったんだけど、なぜかこの日はもう家にいてさ。
オヤジもカリカリしてて、ちょっと反論しただけで殴られてびっくりして声も出なくて。
とりあえず親の言うことに従うしかないから、風呂入って着替えて居間に行ったら、遠く離れた場所に住んでるはずのじーちゃんばーちゃんがいて…。
「あれ?なんかおかしい?」
なんとなくそう思い始めたのがこのとき。
俺の知ってるじーちゃばーちゃんも優しい人なのに、このとき目の前にいたじーちゃんばーちゃんはものすごい嫌味や暴言酷くて、自分が知ってるのと真逆の性格してたんだよね。
おまけにみんな右利きなのに左利きで、右手で箸使おうとしたら物凄い勢いで怒られるし…。
んで食事終わって自分の部屋に戻ったら、部屋に置いてあるものがいつもと真逆の位置にあって物凄い違和感が。
「もしかして自分、似たような別の家にきちゃったのかな?」
そんなこと思いながらとりあえずその日は寝た。

特に夢も見ないで目覚めたら、オヤジはもう仕事に行った後で食卓には母親とじーちゃんばーちゃんが俺が起きてくるの待ってた。
またここでぶちぶち文句言われたりしてたんだけど、何が何だかわからなくて混乱してたんで何いわれても耳にはいってこなかったな…。
食事終わらせて幼稚園に行ったんだけど、幼稚園もなんかみんな自分の知ってる人ではあるんだけど、中身が違うって感じでものすごく怖かった。

お迎えに来てもらって自宅に帰ると、また母親に放置されたんで家にいるのが怖くてまた林道に行ったんだけど…。
途中のトンネルで、向こう側から自分と同じくらいの背丈の子が歩いてくるのが見えたんだよね。
最初はあまり気にしてなかったんだけど、近づいて相手の顔がわかるようになったら怖くて泣きそうになった。
だって、その子自分だったんだ。
向こう側から歩いてくる子は服装は同じだったんだけど、体のあちこちにあざがあってうつむいて歩いてた。
何となく目を合わせちゃいけないって思って、視線そらして歩いてたんだけど、すれ違いざまにその子が言ったんだ。
「君はいいよね、お父さんもお母さんも優しくて」
ビックリして振り返ったら…その子はもういなくなってた。
怖くなって全速力で走ってトンネル抜けて、林道の奥で時間つぶしてたんだけど、夜にはなるわけで…。
またあの怖い親たちがいるのかなと思うと正直帰りたくなかったけど、仕方なく帰ったんだ。

また母親が怒りながら出迎えするのかな、ってびくびくしてたんだけど…。
家には誰もいなかった。
鍵は持ってたから自宅内に入ったら、いつもの家だった。
自分の部屋も確認したけど、机とかの場所はいつもと同じで逆になんてなってくて。
じーちゃんばーちゃんもいないしで、何だか急にほっとしたんだよね。
その後帰宅した母親はいつもどおりの、穏やかな人で帰宅遅くなったの謝ってから食事の支度して、オヤジは夜中に帰ってきたらしくいつもどおりの生活だった。

このことがあった後、友達ができて林道に行くことが何回かあったんだけど、こんなおかしなことは二度と起こらなかった。
あれはいったい何だったんだろう?
すべて真逆だったこと、トンネルで自分とそっくりな子に出会ったこと考えると、もしかしたらあのトンネルとを通ったときに別の世界の自分の家に行ったのかな、って思えてくるんだよね。
それにしても…。
あの時すれ違った自分とそっくりな子は、親たちに虐待されてたんじゃないかって思えるんだけど…。
無事でいるんだろうか。



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