私には幼稚園時代からの友人がいました。
「いました」というのは、数年前に病気でその友人が亡くなったんです。
内臓系の病気ならまだ納得いったのですが、「若年性の痴ほう症」で老人の痴ほう症よりも進行が早いそうで、発病・診断が下されてからたった2年で急逝してしまいました.
さすがに本名は言えないので、この友人のことはこれから仮に由奈という名前でお話をしますね。
由奈と私は少し離れた場所に住んでいたのですが、幼稚園・小中学校が同じということもありその後も何かと一緒に遊んだり親子ぐるみでキャンプなどに行ったりしていたんです。
親同士はとても仲がよかったのですが、実は私と由奈はちょっとぎくしゃくいていて…。
幼稚園の頃からずっとなんですが、由奈が私の顔色をうかがって発言してたりっていうこと多かったんですよね。
私は別に他の人と差別することなく由奈に接していたんですが…。
少し周囲のことを気にしすぎて、自分の意見があっても発言できないタイプの子でした。
由奈の病気が発覚してから、しばらくは本人もかなり落ち込んでいて誰にも会いたくないって言われて、メールすら返事をしてもらえなかったんです。
親子同士ではやり取りがあったので、私の母親から状況は少し聞いていたんですが日に日に症状が悪化しているとしか聞けませんでした。
そんなある日、由奈から突然電話が来たんです。
あまり下手な発言をして傷つけちゃいけないと気を付けながら話をしていました。
そしたらいきなり幼稚園時代や小中学校時代のことを話しだしたのですが、私が忘れていることばかりで返答に困ってしまいました。
由奈は私の返事を聞いてるのかわからないくらい、一方的に話したいことを話すと渡したいものがあるから家に来てほしいって言いだしたんです。
この電話をもらった数日後に私の誕生日があるから、プレゼントを渡したいんだって。
今までお互いそういうのはやめようっていって一度も誕生日プレゼントを渡すことはなかったのにどうして?と疑問に思ったのですが、由奈に次いつ会えるかわからないので翌日由奈の家に行きました。
由奈のお母さんは心身共に疲れ切った感じでしたが、私の顔を見るとパッと明るい表情で出迎えてくれました。
2階の由奈もすぐリビングから出てきて、一緒に2階の由奈の部屋へ。
外は快晴で部屋のカーテンも開いていたのですが、何だか妙に室内が薄暗く感じたのを覚えています。
由奈のお母さんがお菓子とジュースを持ってきてくれた後、由奈が外の状況や私の近況を聞いてきたのでそれに返答する形で会話をしていました。
どうやら病気がわかってから、記憶力も落ちて他人に迷惑をかけるのが嫌で外出もろくにしていなかったみたいで…。
この日も聞いてもすぐ忘れてしまうのか、何度も同じことを聞かれて繰り返し同じことを話ししていました。
そしてそろそろ帰ろうかという時間になったときに、由奈が思い出したかのように私に渡したいものがあると…。
15cm位の奇麗にラッピングされた小さな小箱を渡されました。
「大したものじゃないけど…。今までありがとう」
最後の言葉に引っかかりを感じたものの、私はお礼を言って受け取り帰宅したのですが、これが由奈との最期の会話でした。
貰ったプレゼントは一週間くらいそのままの状態で机の上に置いておいたのですが、さすがに放置しておくわけにもいかず中身を取り出しました。
中身はごく普通の小さなテディベアのぬいぐるみ。
両手で小箱を持っているデザインで、カワイイのでそのままベッドサイドに飾っていました。
その後由奈とはたまにメールでやり取りすることがあったのですが、直接会うことはなく2年後に亡くなってしまったんです。
お通夜・お葬式に参列し帰宅した日は悲しくて仕方なかったのですが、この日からおかしなことが起こり出しました。
眠っている最中に誰かに髪の毛を引っ張られるとか、脚を掴まれる、金縛りにあうとか、誰もいないのに耳元で女の人の声がするとか…。
家族と同居しているんですが、私以外こんな現象体験していなくて由奈が亡くなって神経過敏になってるんじゃ?と言われるだけ。
共通の友人に話をしても初めは真面目に取り合ってくれませんでしたが、あまりに私が怖がるので弘美が泊りに来てくれたんです。
友人の中で霊感があるとみんなから言われている弘美が来てくれるなら大丈夫、と安心したのですが…。
私の部屋に入るなり弘美は無言になってしまい、どうしたのかと聞いたら一言。
「最近何か拾ったりした?」
こう聞いてきたんです。
拾ったものはないけど、貰い物ならあると由奈からもらったテディベアの人形のことを教えると、弘美はテディベアを見るなり顔が真っ青になって慌てて人形を手に取ったんです。
そしていきなり両手でテディベアを力任せに引き裂いたかと思ったら、テディベアが手にしていた小箱を壊したんです。
何が何だかわからずただ黙ってみていたんですが…。
小箱の中から髪の毛とツメのようなもの、さらに血液のようなシミの付いた布と、小さく折りたたまれた便せんがでてきたんです。
恐る恐る便せんを開いてみたら…そこには私がすっかり忘れていた、子供のころに私が由奈にした意地悪なことやいじめに近いことが書かれ、恨み言も書かれていました。
「…明日、一緒に知り合いの霊能力者のとこに行こう…」
弘美はそれだけ言うと持参していた塩をまいたり、箱の中に入っていたものをまとめて目につかないようにしてくれました。
その日の夜は怖くてなかなか眠れなかったのですが、弘美がいたおかげか何も起きませんでした。
翌日朝一で弘美が知り合いの霊能力者に連絡してくれ、お祓いのようなものをしてもらい、小箱の中身を箱ごと引き取り処分してもらいましたが…。
何も知らずあのまま手元に置いておいたら、命を取られていたかもしれないと言われてゾッとしました。
一体なぜ今頃になってあんな子供のころのこと…と正直思っていたりもします。嫌ならいやで付き合いやめればよかったのに、と。
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