佐藤明美は母親の死後、彼女の部屋の遺品整理を始めた。部屋の片隅には古びたダンボール箱があり、その中から1つのビデオテープが見つかった。ラベルには何も書かれていなかった。
明美は興味を持ち、そのテープを再生することにした。古いビデオデッキをセットして、テープを入れた。
映像が始まると、そこには若いころの母親と見知らぬ男性が映っていた。2人は楽しげに話し合っている様子だった。しかし、その背景には何か奇妙なものが写っていた。それはぼやっとしていて、形がはっきりしないが、人の形をしていた。
その人影は、2人が笑いながら話している間も、ずっと動かずに立っていた。2人はその存在に気づいていない様子だった。
明美はその人影に興味を持ち、映像を一時停止してよく見てみると、その人影の顔がゆっくりとこちらを向いてきた。そして、驚くべきことに、その顔は明美自身と瓜二つだった。
怖くなった明美は、テープを止めようとしたが、ビデオデッキのボタンが効かない。そして、その映像の中の明美がゆっくりと口を開け、「私を放して」という声が聞こえてきた。
恐怖に駆られた明美は、急いでテープを取り出そうとしたが、手が震えて上手くできない。そして、テレビの画面の中の明美が、ますます明美本人に近づいてきた。
画面が突然真っ白になり、その後、テープの映像は終了した。明美はその場でしばらく動けないほど驚いていた。
次の日、明美はそのテープを焼き捨てることに決めた。しかし、ダンボール箱の中を見ると、テープは元の場所に戻っていた。
明美はその後、そのテープの存在を知る人は誰もいないと確信し、それを深く埋めて二度と見ることがないようにした。
その数年後、明美の家には新しい住人が引っ越してきた。そして、その家の庭で、古びたダンボール箱と1つのビデオテープが見つかった。