深夜、カナは突然、スマホのラインから通話リクエストの通知を受け取った。画面を見ると、発信者は「よみかわ」と表示されていたが、カナにはその名前の友人はいなかった。不思議に思いながらも、好奇心から彼女は通話を受けた。
「もしもし?」カナが言ったが、反対側からの返事はなかった。ただ、遠くで誰かが重い息をつく音が聞こえた。
「誰? どうして私に電話しているの?」カナが再び尋ねると、今度は背後で小さな子供の笑い声が聞こえた。しかし、カナの部屋には彼女一人しかいなかった。
不安になり、カナは「もしもし?」と声を張り上げた。すると、通話の向こう側から冷たい、感情のない声が返ってきた。
「見ているよ…」
カナは怖くなり、通話を切ろうとしたが、スマホの画面が反応しなかった。その時、彼女の部屋の鏡に映る自分の背後に、白い服を着た男の姿が現れた。彼の顔は青ざめ、目は真っ暗で、まるで生気がなかった。
悲鳴を上げようとしたその瞬間、彼女の口からは声が全く出なくなった。男はゆっくりと彼女に近づき、耳元でささやいた。
「君はもう逃げられない…」
その後、カナは行方不明となった。彼女のスマホは彼女の部屋の中央に置かれているだけで、発信履歴には「よみかわ」という名前の通話記録が残されていた。しかし、その番号はどのキャリアにも登録されておらず、カナの友人や家族にもその名前の知り合いはいなかった。
警察の捜査も結局、カナの行方を突き止めることはできず、彼女の消失は未解決のままとなった。それから、町の人々の間で「深夜のライン通話には絶対に出てはいけない」という噂が広がった。