【怖い話】消えた電車

短編の怖い話



夜の11:59分。都会の一角にある無名の駅、東山駅。ここには語られる都市伝説があった。夜中に一本の電車が現れ、乗った者を連れ去ってしまうというものだ。

アキトは大学の友人たちと飲んでいた。その日は遅くなり、夜の深い時間に駅に到着した。アキトは最後の電車に乗り遅れたことを悔いながら、タクシーを拾うための出口を探した。

と、そのとき、ホームに一本の電車が入ってきた。それは古めかしい車両で、今の時代にはあまり見かけないものだった。アキトは興味本位で車両に近づいてみる。車内は空っぽで、透明な窓からは、他の車両や景色がはっきりと見えた。電車のドアが突然開き、アキトは思わず中に入った。

ドアが閉じると、電車はすぐに動き出した。アキトはその異様な速度に驚いた。車窓の外を見ると、見たことのない景色が広がっていた。無限の平原、巨大な塔、輝く光の海など、現実とは思えない光景だった。

何度か停車するも、どの駅にも降りる勇気がなかったアキト。しかし、次第に眠気が襲ってきた。気がつくと、アキトは自分の家のベッドの上に横たわっていた。夢だったのか、それとも…。アキトはその日以降、夜の東山駅を訪れることはなかった。

しかしある日、アキトが持っていたスマートフォンに、その夜の風景が撮影されていることに気づいた。そして、その中の一枚には、消えた電車の中で眠る自分の姿と、アキトの隣に座る、顔の見えない不気味な影が写っていた。



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