【怖い話】お化け屋敷のお人形さん

実話の怖い話



お化け屋敷の怖い話をします。
関係者全員が、あの出来事があってから、多少なりとも、人生が変わったのではないかと思います。怪我をした、不幸になったという事は今の処は無いのですが、未だに呪いのようなものは終わっていないからです。

大学の文化祭での話です。
ちょうど、時期は10月の後半、ハロウィンの時期で、何名かのサークルのメンバーが集まって、お化け屋敷を作らないか、って話をしたんですよ。ちょうど、ハロウィンの時期だったので、街中にハロウィン・グッズが売られていたので、どうせなら、和風のお化け屋敷じゃなくて、西洋風のお化け屋敷にしようってなったんです。そして、大学の文化祭って言っても、結構、本格的な作りにしたいな、って。

で、みんな、色々、ハロウィン用のグッズを集めたんですね。
お化けカボチャは勿論、ドラキュラ、フランケン、狼男、魔女、死神、ゾンビっていう形で。結構、色々、集めた結果、何かいまいち怖くないかも、って誰かが言いだして、やっぱり、日本で西洋風の怪物って怖くないのかな、って話になったんですよ。まあ、所詮、大学の文化祭だし、それに、本当のお化け屋敷だって、怖がりじゃなければ、言われている程、怖くない、って、私は思ったりしたんですが、本気で観客を怖がらせたい、って空気がみんなの中で多数派を占めていて、何としても怖がらせようって盛り上がったんですよね。

そこで、何か西洋っぽいもので、一番、怖いものは無いかって話になっていて、みなの中である意見が出たんですよ。

それは、人形です。

アンティーク・ドールとかのそれです。
正確には、ちょっと違うものを選んだのですが……。

球体関節人形っていうものがあって、それが好きな子が何名かいたんですよね。それで、みなでお金を出し合って、その筋では有名な人形作家さんから、数十万する人形を、文化祭で行うお化け屋敷の為に出し合おうって。それで、一人、一万ずつカンパをするのか? って、話になったんですけど、一人、お金持ちの家の子がいて、前から球体関節を買ってみたかったので、もし、この機会に買うのだったら、半分以上は購入資金を出してもいいって、その子が言ったんですよ。文化祭が終わった後に、自分が所有者になる、っていう条件で。で、みんな盛り上がっちゃって、面白いから、やろうって話で、一人、五千円。出せる人は一万円、出せない人も三千円は出す。それで、出費を取り戻す為にも、お化け屋敷は成功させよう、って話になったんです。

届いたお人形はというと、本当に生きた人形のように綺麗で、それでいて、何処か不気味で怖かったんですよ。それに、何と言うか、本当に生きているような迫力があったんです。

純白のドレスを纏っていて、とても怖くて綺麗でした。

みなで、その人形に見惚れた後、その人形を何処に配置するかって話になったんです。
やっぱり、どうせなら、一番、映える場所が良いという事で、お化け屋敷の中心に悪魔の祭壇みたいな場所を作る事にしたんですよ。魔法陣とか作ったり、いかにもな西洋風の燭台とか置いたりして。そこに置くのが一番じゃないかって。

ちなみに“怪異”は、文化祭の数日前から起こるようになりました。

その例の悪魔の祭壇の辺りで、聞いた事も無いような、誰かの啜り泣き声が聞こえたんです。他にも、置いてあった燭台が倒れたとか、そんな事が相次いで起こりました。燭台は実際に蝋燭を使っていたわけではなく、大学からの注意もあって、乾電池式の電球を使ってそれっぽくしていたので、大事には至らなかったのですが、もし、本当に蝋燭を使っていたら地面がカーペットだったので火事になっていたかもしれません。

お化け屋敷の責任者である、各サークルの代表やサークル顧問の先生のみんなが集まって、このお化け屋敷で危険な事は無いか、何度もチェックを入れたんです。それで、特に大丈夫だろう、って。軽音部の音楽のステージのように、照明が落ちる可能性があるわけでもないし、屋台のように火の元が危ないわけでもなく、死神のコスプレ用の鎌だって刃物を使っているわけじゃないですから、危ないものって本来なら無い筈なんですよね。

その後も、前日に、怖い事があったんです。
何やら、セットの中で、白い人影のようなものを見た、っていう人が何名も現れたんです。美術部の顧問の先生が、TVのホラー特集の現場でもあるんだけど、こういう事をやっていると、本当の幽霊が出るって言われるからなあ、って、結局、せっかくみなで頑張ってやろうとしたお化け屋敷は決行する事になったんですよね。奇妙な事がたてつづきにに起こっているのも、みなが授業とバイトに加えて、文化祭の準備で忙しいから疲れているんだろうなあ、って。

ちなみに、そのお化け屋敷ですが、入り口の方はいかにもハロウィン風のデザインになりました。大きな顔のあるお化けカボチャが置かれていて、看板の所々に魔女やドラキュラやフランケンなんかの怪物の絵が描かれている。そして、美術室から借りてきた彫刻に死神の衣装を着せて、鎌を持たせてみました。

そして、例の悪魔の祭壇の部屋と私達が呼んでいた場所ですが、その部屋に入る前にも、入り口として奇妙な作りものをしたんです。

それはまるで、サーカス小屋の入口のようになっていました。
いかにも、西洋の見世物小屋風にしたんですよね。
その中に入っていくと、とても不気味なものが置かれている、みたいな。

そして、当日の事です。
お化け屋敷は大繁盛しました。
とても怖い、ただの文化祭の出し物とは思えない、遊園地かの本物のお化け屋敷見たい、そんな風に好評が好評を呼んで、とにかく、お客さんが沢山、入りました。文化祭は土日の二日間ありましたので、日曜日は土曜日以上に人が沢山来て、他校の生徒もお化け屋敷を見に訪れたんですよね。それで、本当に大盛況になって、準備資金は参加者達に大きく戻ってきたんです。私も当日は本当にみなと一緒に浮かれて喜びました。

それから、例の人形は、約束通り、購入資金の半分を出した女の子の物になりました。ただ、その子は、何処か喜びながらも、悲しそうな、恨めしそうな顔をしていたのを覚えています。

それから、数日が経過しました。
あのお化け屋敷に参加した者達の家に、夜に何か白い影のようなものが訪れるようになったんですよ。顧問の先生達の処にも現れて、いよいよもって、これはお祓いをした方が良いんじゃないかという話になり、文化人類学の教員をしている先生の親戚にお坊さんがいるので、そのお坊さんに視て貰う事になったんです。

そして、文化祭から二週間くらいが経過した土曜日の昼頃に、お坊さんはお化け屋敷をやっていた場所に来ました。一緒にお坊さんの奥さんも連れて……。

そのお坊さん自体は、あくまで職業坊主という話だったらしいのですが、お坊さんの奥さんの方はどうやら、本当に視える人、霊感のある人らしくて、彼女がずっとお化け屋敷をやっていた部屋を視ていると、何やら、人の形をしているけれども人ではないものが視えるという事になったんです。
その話を聞いて、すぐに、あの人形の事では無いのか? という話になりました。
そして、出来れば、その人形を持ってきて貰って、直接、視てみたいという話になりました。

お坊さんの奥さんの話いわく。
どうやら、例の人形は“生きている”との事です。
そして、その人形は“見世物”にされた恨みで、良くないものを沢山、呼び寄せているとも……。それを聞かされた時、私は一気に背筋の毛が逆立ちました。他のお化け屋敷の関係者達も、同じだったと思います。

そう言えば、あの人形の持ち主になったお金持ちの女の子が、文化祭の終わった後、人形を家に持ち帰ってから、学校で姿を見かけなくなりました。お化け屋敷を一緒に作った顧問の中には、彼女が取得している科目の講師も顧問に混じっていて、彼女が取っている講義には、彼女の出席カードが提出されているので、講義には来ている筈らしいんです。でも、その講師いわく、確かに彼女の姿を文化祭が終わった後に、見掛けた記憶が無いそうです。その講師の授業は週に二回あって、二回とも、彼女は講義に来ている筈なのに……。

みなに、お金持ちの女の子の電話番号やメールアドレス、住所は知らないか聞いてみました。そう言えば、誰も知らないのです。そう言えば、あの子は何者だったのだろうか……。

あの人形作家さんに連絡をしようとみなで考えたのですが、作り手の人形作家さんの名前を誰も知らないんです。そう言えば、あの人形を買ってお化け屋敷の道具にしたいと最初に口にしたのは、例のお金持ちの女の子だったような気もします。その筋では有名な人形作家さんですが、誰も詳しくは知らなかったんです。購入の際には、顧問の先生方が責任を持ってサイトで購入して家に届けて貰った筈なのですが……。

なんでも、お坊さんの霊感の強い奥さんいわく、人形を置いてあった悪魔の祭壇と呼ばれていた場所は、どうやら、霊道になってしまったらしくて、そこら辺にいる沢山の浮遊霊や動物霊を集めてしまう場所になってしまったらしいんです。しまいには、悪魔の祭壇として使っていた場所の付近の教室は、使われなくなりました。近付くと、誰もいないのに気配や、奇妙な動物の泣き声、物陰に啜り泣きながらうずくまる人影が見えるという話です。その近くを通って、何人もの学生達が原因不明の体調不良に悩まされました。来年、その霊道になってしまった場所の校舎は一度、壊して、建て直す工事を行うらしいのですが、どうなる事になるか私には分かりません…………。

あの文化祭から、もうすぐ一年が経過します。
今でも、時折、私は夜中、金縛りにあって幻覚を見ます。それは夢なのか幻覚なのかまるで分かりません。

見てしまうものは、豪華な家の部屋の中なんです。
あの名前を思い出せないお金持ちの女の子が、例の人形を大切に抱き締めています。人形は恨めしげに此方を見ています。女の子は助けを求めているような表情で、何かを口にしています。私には何を言っているのか分かりません。あのお化け屋敷に関わった者達の夢の中に、月に一、二度、現れるのだそうです。あの女の子は自分を助けてくれる人間を探しているのかもしれません。

以上で、私の話は終わりです。

あの女の子の名前を思い出せないし、今では、何故か大学の入学者のリストの中からも消えているそうです。そして、あの人形を作った人形作家さんが誰なのかも分かりません。関係者の記憶から、綺麗に抜き取られています。

ただ、私は夢を見るんです。
きっと、永遠に見世物にされたあの人形の恨みは消えず、人形が連れていってしまった世界に閉じ込められた女の子はこの世界に戻ってこられないのでしょう。



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