【怖い話】赤いだるま

短編の怖い話



赤いだるま

Kさんは赤いだるまのストラップをいつも持っています。それは時に携帯のストラプだったり手鏡だったりします。まだ若いのに随分渋い好みだなと思い、「いい好みしてるね」と話を振ってみました。すると「以前、だるまさんに助けられたことがあってね」とこんな話を聞かされたんです。

Kさんがまだ高校生だった頃の年明け早々の話です。その時は冬休みの終わりに近づいたある日の夜中でした。喉の渇きを覚えたKさんは階段を降りキッチンに向かいました。キッチンにつながる廊下を歩いていた時、Kさんの目前のキッチンの入り口から何かが出てきたそうです。Kさんは目を疑いました。それは20cmほどの大きな赤いだるまだったんです。

そのだるまには人間の手足がついていました。そんなだるまがキッチンからごく普通に歩きながら廊下に出てきました。その光景に恐怖を感じるようなことは全くなく、むしろぽかんとして固まったまま、その姿を目で追っていました。と普通に歩いていただるまが、ふとこっちを見ました。あの丸いだるまの上半身だけが向きを変えたというのです。

柔らかい材質の着ぐるみのようだったと話しています。そしてだるまと目が合いました。その瞬間、だるまはびっくりしたように駆け出して、廊下を挟んで向かいにある応接間に走り去って行きました。一瞬の出来事にKさんはあっけにとられ、その後もしばらく固まったままでした。すると応接間からさっきのだるまがひょこっと半身をのぞかせました。

「お前明後日は絶対遊びに行かないほうがいいからな。これはマジな忠告くだ。一応謝礼ってことで受けとっておきな。」

そういうとまた応接間に引っ込んで行きました。Kさんは慌てて応接間に行き電気をつけたそうです。ですがそこにはだるまの姿は見えず、まただるまの置物や掛け軸といったものはありませんでした。

「なんだろう、幻でも見たのかな?謝礼って私は何かしたっけ・・・完全に今風の話し方だったけど。明後日は11時から友達と待ち合わせしてカラオケに行くんだけどな。遊びに出るなってどうしよう・・・」

そんなことを思い、余計に乾いた喉を潤すためにキッチンへ入りました。水を飲んでからふと見たテーブルの上。そこには明日食べようとしていた北海道の某有名なお菓子がなくなっていました。

「謝礼ってこのことか。あのだるま勝手に食べやがって。どももしこれが事実なら忠告は本物なの?」

次の日悩んだ挙句、友達とのカラオケは仮病を使ってドタキャンすることにしました。その版のニュースを見ていた時のことです。Kさんがカラオケに行くのに使うはずだったバスが大型からトラックとぶつかり南院から怪我をしたとのことでした。だるまの忠告を聞いたために私は事故に巻き込まれずにすんだんです。幸いなことにあのバスに乗っていたカラオケに行っていた友達は怪我をせずにすんでしました。ですが学校ではその事故の話題のことで持ちきりになっていたんです。

そんなことがあっからKさんはお菓子をキッチンのテーブルの上に置くようになりました。そしてお菓子は朝になるとなくなっていることが何度かありました。それからだるまの姿を見ることはなくなりましたが、何かの忠告がもらえるかと思っているのだと言います。だるまの何かをいつも身につけているのはそのような理由があったそうなんです。

「なんかあいつが見守っているような気がして、ストラップとかはお守りがわりにつけているんです。

Kさんはにこやかにそう言いました。その後私はKさんの家に訪れることになりました。その理由はだるまのことをもっと詳しく知るためです。そのためにはあの応接間を調べるしかないと思ったからでした。最初はKさんは反抗的だったものの、もう一度だるまにあいたいとのとで了承してくれたんです。

応接間を調べ始めて1時間が経った頃、応接間の押入れを調べることになりました。そして上の方の押入れを調べている時です。だるま関連のものが出てきました。ものというよりはお札だったんです。押入れの奥の方にひっそりとはっていました。普通だと気味が悪くなってしまうと思うのですが、なぜかそんな気味の悪い感じはしなかったんです。

私たちは直感的にこれは守り神的な存在なんだと感じました。それを確認した後、私たちはそのままものを元に戻し押入れの戸を閉めました。そしてそれからKさんと私は仲良くなりました。今では大学を卒業し、違う場所に住んでいるのですが連絡を取り合う中になっています。

もしあのままだるまの忠告を聞いていなかったら・・・もしかしたらKさんはこの世にいなかったのかもしれません。私は未だに諸語例は見たことはありませんが、Kさんの話を聞いてから少し信じるようになりました。そしてKさんと同じでキッチンの上にお菓子を置くようになったのは内緒の話です。時々確認に行くのですがお菓子がなくなったことは一度もありません。みなさんんもよかったらお菓子を置いて見てはどうですか?

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