【怖い話】もう一人の自分

短編の怖い話



これは自分が本当に体験した話なんだけど、今でも不思議に思う。
中一の5月の連休明けから、急に行ってもいない場所にいたって、近所の人とかクラスメイトに言われるようになったんだ。
たとえば……。
「連休中、終電間際駅の構内ふらついてたよね?」
「学校があるのに昼間に商店街ふらついてた」
「〇×病院の待合室で見て声かけたけど、無視された」
どの話も、指摘された時間は家族と自宅にいたり、きちんと学校に行ってて、そんな場所にいるはずないんだよね。
「自分に似ている人が世界で三人はいる」
っていうじゃん?
だからきっと他人の空似だったんじゃないかってことで、話は終わってた……はずだった。
俺のそっくりさんの目撃、6月ごろが一番多かったんだけど段々少なくなって7月のテスト時期にはもう聞かなくなってみんな忘れてしまったようだった。
それで俺自身もすっかり忘れて、そのまま夏休みに入ったんだよね。
帰宅部だったもんで、夏休みは自宅でぐーたら過ごしてたんだけど、クラスの連中がキャンプに行こうって誘ってきたので、暇だったし親もOKしてくれたんで行ったんだ。

キャンプ場はほんの少し市街地から離れた場所の山の中にあった。
参加したのは俺とクラスメイトのA男とB、A男の友人で隣のクラスのCとDだったんだけど、テントとか荷物はA男のお父さんが車で運んでくれて、2日後に迎えに来てくれることになってたんだ。
そこそこ大きなキャンプ場で、学校の行事なんかでキャンプとか炊事遠足なんかをすることもあったんで特に問題もなく場所取りして、ふざけながらテント張りして楽しんでたんだよ。
A男のお父さんは夕飯作りまでは手伝ってくれて、それで家に帰った。
大人がいないってだけで凄い気楽になるし、気持ちが大きくなっちゃってテンション上がるよね。
わいわい楽しく話ししながら夕飯のカレー食べて、食器なんかを片付け終えてから、施設内にある入浴施設で風呂入ったんだけど。
このとき脱衣所の鏡をふとみたら、何となく自分に似た人がいたんだよね。
なんかびっくりしちゃって、その人の方みたんだけど誰もいなかったんだよ……。
このときは気のせいだと思ってそのまま風呂はいって、その後みんなで花火をして、終わったのが10時すぎだったかなぁ?
花火の後始末してテント戻ってひと段落ついてたときに、
「近くに墓地があるから肝試ししないか?」
ってCが言いだしたんだよね。
俺はあんまり気乗りしなかったんだけど、皆行きたがってたんで仕方なく行くことになったんだ。
2人ペアで行こうかって話もあったんだけど、墓地までの道街頭なくて暗いから、何かあったら大変だと結局4人で行くことに。

墓地に行くのに一度キャンプ場の外に出なきゃいけないのかと思ったら、墓地の中にある小道から行くことができるらしく、言い出したCが先頭で、A男、D、Bそして最後尾に俺っていう並びで山道を歩きだした。
最初はみんなギャーギャー騒いでたんだけど、10分くらい歩いたころには、キャンプ場の人の声や物音も聞こえなくなってきたんだよね。
全員が持ってる懐中電灯しか灯がないのもあって気味悪くなってきたのか、誰も話さなくなった。
でもう少しで墓地、ってとこで左足の靴紐がほどけて、俺しゃがんで結び直したんだよ。
それで立ち上がって前を見たら、誰もいないんだ。
ほんの数秒の出来事なのに、全員の姿がないっておかしいなと思いつつも、一本道だから迷うことはないよなぁって、そのまま一人で真っすぐ歩いてたんだけど、墓地に着くどころかA男たちの姿すら見えないんだよ……。
懐中電灯で周囲照らしても、草木ばかりで人の姿は見えないし、墓石らしいものもない。
スマホで連絡しようとしたんだけど、圏外で使うこともできず仕方ないから先に帰ろうかと思ってたら、後ろに人の気配したんだよね。
でA男たちかと思って振り向いたら……。
そこには俺がいた。

「何言ってるかわからない」
そういわれるかもしれないけど、本当に俺が……いや、俺そっくりな奴がそこにいたんだよ。
驚いて思わず叫びそうになったのをこらえて、そいつを懐中電灯で照らしたんだけど、着ている服も髪型も俺そっくり。
なんでかそいつはうつむいてただ立っているだけで、何か話そうって感じではなかったんだよ。
「……こんなとこで何してんの?」
怖かったけど、そう相手に聞いたら……。
いきなり顔を上げてオニの首でも取る勢いな、ものすごい怖い形相で俺にとびかかってきたんだ。
思わず地面に倒れた俺に馬乗りになって、そいつは無茶苦茶強い力で俺の首絞めてきたんで、何とか逃げようと相手殴ったりしてたんだけどびくともしなくてさ。
まともに呼吸できなくて意識遠のきかけたときに、遠くからA男たちの声が聞こえたような気がしたんだけど……。
「邪魔された」
って、俺そっくりな奴が一言つぶやいた瞬間、俺の意識飛んじゃったんだよね。

気が付いたらテントの中で寝かされてて、A男たちが心配そうに俺のこと見てたんだ。
A男たちの話だと、途中までは俺がいたの全員把握してたらしんだけど、どの時点で俺がはぐれたのかがわからなかったらしい。墓地についたときにいなくて、慌てて戻って探してたんだって。
俺の体験を話したら、全員怖がって幽霊だとか散々騒いで、連休明けくらいからの似た人物の目撃談の話になった。
「それ、もしかしてドッペルゲンガーじゃない?」
Dがそう言ってたんだけど……。
俺そっくりな何かは、キャンプから帰るまでは姿を現さなかった。

帰ってからお祓いにも行ったおかげか、それ以来そっくりな何かを見ることもなく、そっくりな人を見たって話しも効かないんだけど、アレは一体なんだったんだろう?
ドッペルゲンガーについて調べてみたら、出会ったら死ぬって話もあるらしくて、またあいつと出会ったら……と思うと怖くて仕方ないよ。



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