オカルト詳しい人なら、似たような話を知ってるかもと思って書いてみる。
父方の祖父の田舎には「ゴッシャ」と呼ばれる妖怪みたいな話が伝わっていて、
いわゆる「言うこと聞かんと、ゴッシャが来てとって食われるぞ」的な
扱いだった。
私は普段は離れた地域に住んでたので、最初そうやってじいちゃんに怒られた時
「ゴッシャって何?」って聞き返したことがある。
結局じいちゃんは教えてくれなかったので、父に聞いたら
「夜中に音させながらやってくる化けもん、子供を攫うから話題にしちゃ
いかんって言われてる」と説明してくれた。
実際、夜寝る頃になってから、外で自転車のブレーキが軋むような音が
何度もしたので「誰か外にいるん?」って見ようとしたら、じいちゃんに
布団に押し込まれたこともある。
何日も続いて音がした時は、真夏なのに雨戸を閉めたこともあった。
小さい頃は純粋に怖かったんだけど、小学校高学年頃になると
「それってつまりちょっと危ない人が、夜中に自転車に乗って徘徊してるんじゃ」と
思うようになった。
仲良くなった近所の子も似たような感じで、本気で「ゴッシャ」を信じてる
人はいなかったと思う。
んでお盆の間は、ゴッシャは悪さをしないとも言われてた。
ここまでが前提。
小学6年生の夏休みはちょっと長めにじいちゃんの田舎に滞在することになって、
盆踊りにも参加することになった。
盆踊りは自治会会館前の広場みたいなとこであって、この日は子供も
多少遅くなっても、親も見逃してくれる感じ。
でもまあ暗くて危ないから、山のほうとかは入っちゃいかんぞ!という感じだった。
何年か前に山の貯水池で子供がおぼれちゃったこともあり、特に貯水池のあたりは
立ち入り禁止になってた。
そしたら近所の子供のリーダー格の子が「せっかくだから肝試ししようぜ!」
とか言い出した。
でも行先は貯水池じゃなく、山の入口にある神社。
この神社は小さくて鳥居と祠しかないようなとこで、敷地内は真っ暗。
そこを探検しようぜ!ってことになった。
んで最年長は小学6年生、最年少は小学2年生のお子様集団7、8人くらいで、
神社に向かって出発した。
田舎道だから街灯と街灯の距離はめっちゃ空いてるし、正直途中で帰りたくなった。
年少組の中には泣き出しちゃった子もいて、私は「帰ろう!」って言って、
神社に着く前に来た道を引き返した。
そしたら全員、文句を言わずについてきた。
それでもずいぶん時間がかかったので、親に怒られるなーとか思いながら歩いてたら、
背後から「キィー……キィー……」という、自転車のブレーキ音に似た音が聞こえてきた。
誰かが「ゴッシャだ」と呟いて、小さい子が本格的に泣き始めた。
年長組で小さい子の手を掴んで、盆踊りの会場に向かって必死で逃げた。
その間も音は、多分一定の距離をおいて、ずっとついてきてた。
盆踊りの太鼓の音が聞こえるようになったあたりで「キィー……」が
聞こえなくなって、そこで私も気が緩んで涙が出た。
盆踊りの会場に戻った時は確か、夜の10時くらいを過ぎてたと思う。
子供達は家に帰って寝たと思ってた大人から、めっちゃ怒られた。
この時までは全員揃ってた。
そして子供達は示し合わせたわけじゃないんだけど、自分達をずっと
つけてきた音の話は、大人達にはしなかった。
騒ぎが起こったのは次の日で、朝起きたら母親から
「リーダー格の子がいなくなった」と聞かされた。
リーダー格の子はあの後確かに家に戻り、自分の部屋で寝たらしい。
でも朝起きたら布団はそのままでもぬけの空、ラジオ体操が終わる頃に
なって、もしや行方不明なのでは?となり、地域総出で捜索中とのことだった。
結局その子は見つからず、どこからともなく「ゴッシャにとられたんだ」という
噂が広まった。
貯水池あたりは特に念入りに探したんだけど見つからず、じいちゃんの家に
滞在している間、夜中にやっぱり何度か「キィー……」が聞こえてきて、
怖かった。
それからじいちゃんの田舎へは行ってない。
正確には5年ほど前に一度だけ、じいちゃんの葬式で行ったけど。
親戚からは「来たんかね!」と驚かれ、日帰りで帰らされた。
その時、行方不明になってたリーダー格の男の子のものだと思われる
白骨死体が、ちょっと前に山の中で見つかったと聞かされた。
ただ男の子の骨は全身揃った状態では発見されず、どんなに探しても
片足の骨がまるっと見つからなかったらしい。
あの時、神社からの道を戻る途中で「キィー……」って音にずっと
つけられたってことを話せば、もしかしたらリーダー格の子は
生きてたんじゃないかと思うことがある。
「ゴッシャ」はもしかしたら地元じゃ有名な変質者だったのかもしれないし、
そう考えるとものすごくしんどい。
ただ、じいちゃんの田舎ではその後、子供は誰も行方不明になってないのが
救いだ。
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