【怖い話】看護婦

短編の怖い話



中学に入ってすぐ、盲腸で入院しました。
夜間に急に痛みだして、翌朝手術ということになったんです。
手術自体は問題なく終わったのですが、術後の経過が悪く患部が癒着しそうになっていたので、入院が長引いていました。
手術後3日目くらいまでは母が付き添いに来ていたのですが、ひとまず容体も安定したからと、4日目には帰宅していました。
ある程度体調がよくなってはいたものの、傷口が傷んであまり動けず、昼間暇を持て余していて昼寝をしていたため、夜に眠れなくなってしまたんです。

その日の夜、消灯時間になって真っ暗になっても目が冴えてしまって眠れず、横になってぼんやりとしていました。
消灯後に看護婦さんが見回りに来ていたのは知っているので、テレビを見るわけにもいかず、起きているのを知られたら怒られるかなと、ちょっと気持ちも焦っていました。
そうこうしているうちにトイレに行きたくなったのですが、入院していた病院がものすごく古くて、昼間でも人がいないと不気味な雰囲気で、夜に一人で歩くの嫌だったんですよね。
テレビ番組やラジオ番組でやっている怖い話も、病院のもの割と多いし霊感がなくても見てしまうんじゃと思ってしまって。
でも我慢し続けるのも限界があるので、思い切ってトイレに行ったんです。

私の病室は一番奥で、トイレは建物の中央付近にありました。
一応廊下は少し照らされていたのですが、やっぱり暗い。
トイレは電気がつきっぱなしだったので、ついたときには安心したのですが、トイレを済ませて手を洗っているときに、ふと鏡をみて思わず声を上げそうになったんです。
看護婦さんが、音もなく私の背後に立っていました。
しかもものすごく青白い顔色をしていて、具合が悪そうな表情で。
ビックリして振り返ると、その看護婦さんはゆっくりと歩いて一番奥の個室に入っていきました。
「あんな看護婦さんいたっけ?」
見覚えのない看護婦さんだったのですが、気味が悪かったのでさっさと自分の病室に戻って、ベッドに横になり目を閉じぼんやりしているうちに眠ってしまいました。
そしていきなり目が覚めたのですが、室内は真っ暗。
眠ってからあまり時間が経っていなかったようで、また眠らなきゃと目を閉じたのですが……。
就寝時はベッド周りのカーテンを閉じているのですが、何だか人の気配がするような気がして、目を開けたんです。
就寝時はベッド周りのカーテンを閉じるのですが、カーテンの向こう側に人影のようなものが見えるので、看護婦さんが見回りに来たのかと思ったんですよね。
眠らなきゃと目をつぶろうとしたら、カーテンが少し開けられてそこから誰かがのぞき込んでいたのですが、よくよく見るとさっきトイレですれ違った看護婦さんでした。
でも私を見る目がとても怖いんです。
怒っているような、恨めしそうな……。
何なんだろうと、看護婦さんに声をかけようとしたら声が出ません。
身体も動かすことができず、ものすごく怖くなって頭がパニック状態になっていました。
看護婦さんはそのままカーテンの中に入ってきて、くっつくんじゃないかってくらい私の顔に自分の顔を近づけて、まばたきもせず凝視していました。
やがて看護婦さんは顏を離すと、ポケットの中から注射器を取り出し、私の腕に注射しようとしたのですが、怖くてそこで気を失ってしまったんです。

年長の看護婦さんに起こされて目が覚めたのですが、深夜のことを話してもそんな看護婦はいないと言われておしまい。
午前中、若い看護婦さんとお話しすることがあって、ついでに聞いてみたら昔この病院のトイレで自殺した看護婦さんがいたのだとか。
自殺の理由は聞けませんでしたが、でも私が見た看護婦さんとその話の看護婦さんは容姿が全く違っていました。
結局あの看護婦さんは、怖いと思っている状態で寝ぼけていたから見たんだと自分に言い聞かせていたのですが……。
夕飯前に、同じ病室の50代くらいのAさんと廊下でお話ししてたんです。
Aさんは私の1週間前から入院していて、とても気さくな人でした。
「私も夜中にベッドの周りに人の気配を感じることがある」
そうAさんが言うんです。
でも幽霊自体は見たことがないそうで、2人で何だろうね、気味が悪いねと話をしていたんです。
その後看護婦さんの幽霊を見ることはなかったのですが、やっぱり夜中に人の気配が側でしていることがあって気持ち悪かったです。

退院後に友人にこの話をしたら、友人からあの病院にまつわる噂話を聞くことができました。
友人の親戚があの病院に勤務していたそうで、そこからの情報らしいのですが、私が入院する一ヵ月くらい前に、確かに看護婦がトイレで自殺したということがあったそうです。
しかも発見されたときはまだ生きていたらしく、すぐに治療をしたものの数日後に亡くなったのだとか。
自殺の原因は院内での不倫だったそうで、私が使用していたベッドに当時その看護婦さんが付き合っていた相手の奥さんが入院していたのだとか……。
看護婦さんの件があってから、その相手の奥さんは別の病院に転院、相手は病院をクビになったそうですが、もしかしてあの看護婦さん、不倫相手の奥さんを殺したいほど憎んでいたのでしょうか?
だからベッドに寝ていた私を、不倫相手の奥さんだと思って注射を……?
あのまま注射された後まで意識があったら、どうなっていたのかと今思うと怖いですね……。
ちなみに病院は小さな個人病院で、院長先生が亡くなって引き継ぐ方もいないために、数年前になくなっています。



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