【怖い話】返事をするな

短編の怖い話



高校のときの部活の先輩で、佐野先輩という人がいてものすごい霊感が強かったんです。
バスケ部だったんですが、学校内で見えるとかいうのはもちろん、合宿先で宿泊したところなどでもよく見えるとかいう話を聞かされました。
佐野先輩はそういうのが見えるを自慢したがる人で、とりまきの人達はそういう話好きな人が多くて、合宿の日の夜は必ずといって怪談話を聞かされていました。

私は佐野先輩とそこそこ仲がよく、一度同じ部活で同学年の矢代さんと、2年生の田口先輩と佐野先輩の家に遊びに行ったことがあったんです。
でも学校で遊びに行くのが決まったときに、「絶対に名前を呼ばれても返事をしないで」と言われたんですよね。
このときはふざけているんだと全員が思ってて、ハイハイいって軽く流していました。
先輩の家はごく普通の一軒家で、玄関正面に大きな鏡が壁にかけられていて、トイレは玄関横でその鏡の前を通らなければいけません。
先輩の部屋は2階で、隣は弟さんの部屋だったと思います。
どちらもしっかりドアが閉められていて、先輩の部屋に私たちが入ったのを確認すると先輩はドアに鍵までかけていたんです。
矢代さんと田口先輩は鍵をかけたのに気づいていなかったようですが、私は鍵をかける瞬間を見て何だか嫌な予感がしました。
最初は学校や部活の話だったんですが、そこから趣味の話になり、そして気が付けば心霊の話に。
田口先輩はオカルトマニアと自ら言うくらいで、佐野先輩といるといつも怖い話してたんです。
それでその日も結局怖い話の流れになって、佐野先輩の小さいころの怖い体験を色々聞かされていたんですが……。
佐野先輩がトイレに行くと部屋を出て行ってすぐ、1階から「ちょっと!」と誰かを呼ぶ声が聞こえたんです。
佐野先輩のお母さんかなと思ったんですが、ずっと「ちょっと!ちょっと!誰かいない!?」という声が聞こえていて、矢代さんが思わず「どうしたんですか?」と部屋のドアから廊下を見たんですが、誰もいないというんですよね。
私も思わず「何かあったんですか?」と声を出したのですが、反応はなし。

しばらくして佐野先輩がおかしとジュース持ってきたんですが、それで誰か呼んでいたのか聞いたら、「呼んでいない」と。
そして先輩が慌てて返事をしたのかと言い出し、矢代さんと私が返事したっていったら真っ青な顔して、早く帰ったほうがいいって言いだしたんです。
その場にいた全員が何が何だかわからず、ふざけているのかと思ったのですが、佐野先輩の物凄い剣幕に押されてその日は帰宅したのですが……。

翌日、部活に行ったときに矢代さんが交通事故に遭って入院したと聞かされました。
そして部活後に佐野先輩から、田口先輩と2人でお祓いにいって欲しいっていわれたんです。
理由がわからなかったのですが、お金はこちらが持つ、お願いだからお祓いに行ってと言われて、3日後の日曜日に行くことになったんですが、その日から私の周りでおかしなことが起こり始めました。

まずこの日の帰宅途中に、目の端に黒い人影が入り込んでいました。
それだけなら気のせいかなと思ったのですが、電車を待っているときに軽く背中を押され振り返ったら誰もいない……。
電車内では背後から耳元で何かつぶやく声が聞こえたんですが、振り返ってもやっぱり誰もないんですよね。
自宅の最寄駅から自宅までは声は聞こえなかったんですが、始終誰かに見られている気がしていました。

自宅には家族がいたんですが、他の人がいてもその妙な感覚が消えてくれなくて落ち着きませんでした。
お風呂に入ればシャンプーをしているときにやっぱり人の気配を感じて慌てて振り返ったら、膝から下の女性の足らしいものが見えて思わず叫んでしまったのですが、慌てて駆けつけた母には何もいないと言われました。
でもお風呂場の床には、私の髪の毛の倍以上はある長さの髪の毛の束が……。
気味が悪くサッとお風呂を済ませて部屋に戻ったのですが、ここからがさらに恐ろしい1日でした。

部屋に戻って10分もしないうちに、1カ月ほど前に交換したばかりの部屋の電球がいきなり割れたんです。
これには家族も驚いていましたが、原因は分からずじまい。
自分の部屋の電気がつかないため、この日は妹の部屋で過ごすことになりました。
妹はちょっと霊感があるようなのですが、私が部屋に入るなり機嫌が悪くなり、台所から小皿に持った塩と水の入ったコップを持ってきたんです。
窓際に塩とコップを置いたのですが、1時間後に見たら塩はがちがちに固まっていて、水も気のせいか減っていました。
「何連れてきたの?」
妹にそういわれたのですが、私自身何が起こっているのかわからないため説明ができません。
「カーテン絶対に開けちゃダメ。あと今日は電気つけたまま寝るから」
妹にはそう言われました。
午前0時を回り、明日も学校だから妹はベッドに、私は床に敷いた布団に入りました。
妹の言うとおり電気はつけたままで寝たのですが、ふと目が覚めると部屋の電気が消えていたんです。
そして何だか嫌な気配がして、思わず妹のベッドの下を見たら……。
青白い肌で痩せこけ、目が落ちくぼんだ恐ろしい形相の女の人がいたんです!!
叫びそうになったのですが声が出ず、そして体も動きませんでした。
お腹の当たりに重さを感じて、目だけ動かしてお腹のほうを見ると、赤ん坊のようなものが乗っていたんです……。
それはだんだんと顔の方に向かって動いてきたのですが、目が合った瞬間私は気絶してしまいました。

そして再び目が覚めたときには、病院のベッドの上でした。
体中が痛んで動くことができず、体も熱っぽくてものすごくだるくて何が起こったのかわかりませんでした。
私が目覚めたのを聞いて駆け付けた両親に聞いた話だと、夜中に物凄い叫び声を上げて痙攣をおこし発熱したそうです。
妹は妹で、私の周りに2~3人の幽霊をみたとか……。
私の熱はなかなか下がらず、熱でうなされていたのか病院でもおかしな人の姿を見たりしていました。
ときには顏を覗き込まれたり、身体の上に乗られていたことも……。

入院して2日後、両親と佐野先輩、そして知らない中年女性が部屋に訪れたんです。
両親は佐野先輩の両親から話を聞き、佐野さんと霊能者という女性を連れてきたとのことでした。
霊能者は部屋に入るなり神妙な顔をしていましたが、除霊するからと全員を部屋から追い出し、私に向かって何か祈祷のようなものを始めたんです。
祈祷の途中まで意識はあったのですが……終わって起こされるまでの記憶はありません。

その後急に熱が下がり、身体の痛みも消えて2~3日様子を見た後に退院となりました。
後から佐野先輩や両親から聞いた話をまとめると、どうも佐野さんの家は霊のたまり場になりやすく、そこにいる霊に反応してしまうと憑りつかれるとか……。
なんでそんな家に住んでいるのかも物凄く疑問でしたが、それについては佐野先輩からは何も聞けませんでした。
田口先輩は返事をしていなかったので何もなかったそうで、矢代さんもお祓いを受けたとかでその後は何もないようです。



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