【怖い話】自画像

短編の怖い話



私の通っていた中学校の美術室には、卒業生が書いた自画像が何枚か展示してありました。
その中の1枚に、とても暗い表情の女生徒の自画像があったんです。
何でこんな自画像が?とみんな思ってたんですが、何でも生徒会長やっていた女性だったとか。
そしてどこの学校にもありがちな「教室に飾っている絵が~」というような、怪談話もその絵にはあったんです。

女生徒がいたころに勤務していた先生は、もう1人もいなくてこの不気味な女性の自画像については噂が色々と出回っていました。
「病気で亡くなる前に書いたもので、絵に憑りついた本人の幽霊が夜構内をさまよっている」
「夜中に自画像の目が動く」
「学校に入り込んだ変質者に殺され、幽霊となって学校内をさまよってる」
などなど……。
校舎内に変質者とか、そういった事実はないのに噂話に尾ひれがついて代々受け継がれていったようです。

私もクラスメイトのSも、入学してすぐその話を聞きました。
2人とも美術部員だったのですが、部活でもやはり暗い自画像の話は最初に聞かされたんですが、ちょっとほかの話とは違っていました。
深夜にあの自画像に向かってお願いごとを言って、自分の血を唇に塗ると願いが叶うという、とんでもない話を聞かされたんです。
そんな黒魔術みたいな話、と私は信じていなかったのですがSが面白いからやってみたいとか言い出し、部長のTさんや、先輩のOさんがじゃあやってみよう!とか言い出してしまって……。

私は参加したくなかったのですが、入部したばかりで先輩の誘いということもあり断わり切れず、結局参加することになったんです。
ただ夜になると玄関は閉まってしまうということもあって、学校祭近くまで実行はされませんでした。
学校祭の準備期間に入ったころに、突然先輩がこの話を思い出して準備で遅くまで残れるからと。
部活の顧問の先生は帰宅に部室となっている美術室の点検があるので、帰宅前に声かけるように、といって部室にいないことが多かったんです。
この日も、ちょっとした用事があるから、終わったら職員室まで連絡に……という流れでした。

それで誰がお願いをするかという流れになったんですが、Sがやると言いだすかと思っていたら真っ先にT先輩が立候補したんです。
Sは前のその場のノリで言っただけで本当にやるつもりはなかったそうで、他に立候補者がいないため、T先輩がやることに。
このとき正式なやり方を聞いたのですが、お願いは他の人に知られてはいけないから心の中で3回つぶやいて、自分の血を自画像の唇に塗るというものでした。
自画像は高い位置に展示してあったので、T先輩は自画像の前で椅子の上に立ち、祈りでもささげているかのように両手を握り、目を閉じてお願いをした後、カッターで人差し指の先を切って暗い自画像の唇に血を塗ったんです。
血を塗り終えたとき、教室の窓ガラスが風もないのにガタガタと一斉に揺れてすぐ収まりました。
その場にいた全員が驚いて立ち尽くしていたのですが、それ以外は特になにもなく、その日は作業を終えて帰宅したんです。

そして翌日。
授業が終わって部室に行くと、顔に包帯をまいたT先輩がいました。
そしてO先輩の姿が見当たらなくて、どうしたのかと尋ねたら、T先輩は起きたら顔が腫れあがっていたと。
O先輩は昨日帰宅途中に交通事故にあって入院していると聞かされました。
前日のおまじないのこともあって、単なる偶然だろうけど怖いね、なんてSと話していたのですが、文化祭の準備を初めているとT先輩がしきりにあの暗い自画像を気にしていたんですよね。
そしてふと気づいたんですが、暗い自画像に塗ったはずの血が消えていたんです。
乾いたにしても色は残るはずだし、おかしいなと思っていたら……。
急にT先輩が叫び出して、まるで何かに追われているかのように窓から飛び降りたんです……。
部室に使っていた美術室は2階で、下が花壇になっていたのもあって、何とか命拾いはしたのですが、そのまま救急車で病院へ運ばれ入院。

2~3日後、先生に病院を聞いてSとお見舞いに行ったんですが、面会できませんでした。
このときT先輩のお母さんと少しお話しをしたのですが、なぜか暗い自画像のことを聞かれたんです。
自画像にあった名前を告げると、T先輩のお母さんは真っ青な顔になって「嘘よ!」などと言いながら、T先輩の部屋に入っていきました。
翌日、部室に行くとT先輩のお母さんと顧問の先生が何かいい争っていたのですが、私やSの姿を見るや否や、私たちに詰め寄って「あんなことやらせたのは誰!」と怒鳴りつけてきたんです。
「あんなこと?」
と一瞬わからなかったんですが、あのおまじないのことだったらしく……。
顧問の先生にも事情を聞かれたので素直に話しをしたら、T先輩のお母さんがいきなり暗い自画像を床にたたきつけ、踏みつけたんです。
必死になって先生が取り押さえ、私たちは帰宅させられました。
その後結局美術部は1カ月ほど活動停止になってしまい、文化祭で展示もできませんでした。

文化祭直前にO先輩が学校に登校しはじめ、何度か放課後に会って話をしていたのですが、交通事故に遭ったとき、後ろから誰かに押されて、倒れたときにあの暗い自画像の子がいたと……。
入院中も何度か暗い自画像の子を見たけど今は見なくなったと、不思議なことを言っていました。
O先輩が登校しはじめてから2週間後くらいに、T先輩も登校しはじめたのですがO先輩のこと避けていて、いつも仲が良かったのにと思って不思議だったんです。

部活がないのでT先輩とも話す機会がなかったのですが、うわさでT先輩のお母さんの気がふれたという話が耳に入ったんです。
この時ふと思い出したのが、部室で暴れていたT先輩のお母さんの姿。
もしかして何か関係あるのかな、と思っていたらT先輩から話がしたいと連絡が来て、土曜の午後に会うことになりました。
駅前の喫茶店でSも呼ばれていたのですが、O先輩は呼ばれていません。
不思議に思っていたのですが、すぐに理由がわかりました。

あのおまじないのとき、T先輩はO先輩が死んでしまうようにお願いしたそうです。
理由は自分の彼氏を取ったから。
そんな理由で?と思ったのですが、さらにお母さんもいなくなればいいと思ってしまったそうで……。
O先輩とT先輩はいつも一緒に帰宅していたのですが、あの日はいつも通りの道で分かれてO先輩が一人になったときに事故に遭ったらしいです。
そしてT先輩の顔の件。
夢にあの暗い自画像の子がでてきて、透明な液体をかけられて顔が溶ける夢を見て起きたら顔に大きなできものができていたと。
そして窓から飛び降りたときは、先輩に暗い自画像の子が近づいてきてパニックになっていたそうです。
そして一番驚いたのは……あの暗い自画像の子、T先輩のお母さんの同級生だったうえに、お母さんがいじめていた子だったとかで、卒業間近に自殺してしまったのだとか……。

T先輩が学校に復帰する前にお祓いをしてもらったそうで、それ以来T先輩の前には暗い自画像の子は現れなくなったそうですが、お母さんには見え続けているそうで、気がふれてしまったとか……。
結局、T先輩のお母さんは精神病院に入院して数年後に自殺してしまったそうです。



短編の怖い話

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUTこの記事をかいた人

怖い話.com

怖い話が好きでブログ更新してます。 オカルト、怖い話、ホラーのジャンルが好きな方にオススメのブログです。