小さい頃、友達と遊んでいて見つけたときの状況がおかしかったので、今でも記憶に鮮明に残っているものがあるんだけど…。
あれはたぶん幼稚園頃だったような気がする。
少なくとも小学校入学前。
記憶に間違いがなければ7~8月の日曜日だったか、祝祭日だったかで親が休みだったんだけどどこに行く予定もなく、斜め向かいの家の子が遊ぼうってきたんで外で遊ぶことにしたんだよね。
夏っていっても昔は今ほど外気温高くもなかったし、田舎だったから友達と外で遊ぶことがほとんどだったんだけど。
この時はたしか、近くの幼稚園の裏山に冒険に行こうって話になったんだけど、2人だとなんだか不安なんで俺んちの隣にいる小学生の兄弟2人も誘って4人で行くことになったんだ。
小学生の方の兄をA、弟をB、斜め向かいの家の子をCとして、これから話をしていく。
幼稚園の裏山へは大きな道路をそのまま真っすぐ歩けば子供でも15分くらいで行くことができて、小さな獣道みたいなものがあったんだよね。
その獣道のすぐ横に道祖神みたいなお地蔵さんがいて、多分近所の人が掃除やお水あげなんかをやっていたみたい。
子供でよくわからなかったものの、俺らは裏山に入るときに一応お地蔵さんに手を合わせて獣道に入ったんだ。
まぁ獣道っていっても、結構道幅広くて軽トラック1台くらいなら通れるくらいだったし、背丈の低い草木が多かったんで道に迷うことはなかった。
脇道にそれてもよかったんだろうけど、Aが急に坂になってるところあたら危ないからと、俺らに獣道から出るなって言い聞かせてたんで、そのまま山頂らしいところまで歩いてたんだ。
途中チョウチョやらカブトムシやら見つけて捕まえたりしながら歩いてたら、頂上についたのか開けた場所に出た。
そこには小さな神社っていうか…お社レベルのものがひとつあったんだよね。
開けてる場所は雑草とかしっかり刈り取られてはいたものの、お社は木造でボロボロになってた。
一応形はあったけど、もう扉や屋根部分の板が傷んで形が歪んだり、割れたりしていて隙間ができちゃってるくらい。
周囲に人もいなければ他に建物もなくて、何だか不気味な感じがして全員そのお社に行くか迷ってたんだけど、Aがいきなりお社まで駆けて行ったかと思ったら、閉ざされてる扉を開けようとしたんだ。
俺らはどうしていいのかわからなかったけど、Aがやってることはダメなことなんじゃないかって思って、必死にAを止めようとしたんだけど聞いてくれなくて…。
このときAは確か小学校4年生くらいで、体格のいい子で空手やってて力もあったもんだから、腐りかけてたらしい扉はすぐに開いちゃったんだよね。
蝶番部分がもう錆びてボロボロになってたみたいで、扉は力任せに開いた勢いで地面に落ちちゃってた。
「壊しちゃった。怒られるよ?」
俺もBもCも悪い事したから大人に怒られるって思って泣きそうになったんだけど、Aはつらっとしてお社の中に手を入れて、御札みたいなもの取り出してきたんだけど、Aについてくるかのようにお社の中から薄黒い煙みたいなもの出てきてさ…。
最初Aの周りにその薄黒い煙みたいのがもやもやっと集まって、Aを包み込んだと思ったらAがいきなり倒れちゃって。
Aが倒れてすぐ薄黒い煙は俺らの方に動き出したもんだから、俺ら怖くて元来た道をしばらく走って逃げてたんだ。
でもAを放っておけないしって、100m位走ったとこで立ち止まって振り返ったら、薄黒い煙は空に向かって動いてた。
こっちに来るかと思ってびくびくしてたけど、薄黒い煙は上空で色の濃さが増して、黒いヘビっていうか…竜みたいな形になってしばらくぐるぐる回転するような動きしてたけど、だんだん色が薄くなっていって、しばらくしたら完全に消えてなくなった。
俺とBとCは悩んだけど、Aの所に引き返したんだ。
そうしたらお社の前で何事もなかったかのようにAがきょとんとした顔して立ってて、どこ行ってたんだって俺らに聞いてきたんだよ。
Aの話だと、お社見つけたところまでは記憶にあるみたいなんだけど、気が付いたら倒れてて、俺らがいなかったって…。
もしかしたらAはあの薄黒い煙みたいなのに憑りつかれてるんじゃないかって、全員で大騒ぎになって泣きながら帰ったんだよね。
そして親に話ししたらものすごい怒られてさ。
お社壊したこともそうだけど、子供だけで山の中に行くなと。
俺とA・B兄弟とCの親も激高したらしいけど、あの薄黒い煙みたいなものについては教えてもらえなかった…というか「気のせいだろう」って言われて終わり。
でも次の日、Aが高熱出してうなされて夢で黒いヘビに食べられるとか噛みつかれるとか言い出したっていうのがあって、急遽全員お祓いを受けることになったんだよね。
子供だけでなく家族全員が。
あのとき詳しいこと教えてくれなかったんだけど、成人後に一回だけ親に聞いてみたら、どうやらAが壊したお社には昔悪さをしてお坊さんによって改心したヘビだか竜のようなものが祀られていたらしい。
それが何でAに憑りついたのかだけど、Aの祖先にその竜だかヘビを改心させたお坊さんがいたらしいって話だった。
お祓いは受けてその後おかしなことはないんだけど、たまに空を見上げると薄黒い竜みたいな姿が見えるのは気のせいだと思いたい…。
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