【怖い話】女の霊

短編の怖い話



メモ帳にまとめたので投下します。
大学2回生の秋、俺・A・B・CでAのアパートに集まってサークル活動の作業をしていた。(漫研なので漫画の原稿作業)
時間は14時ごろだったと思う。
黙々と手を動かしてたから部屋の中は静かだった。
すると突然窓からバン!と大きな音が。
ビックリして窓に顔を向けると顔が真っ黒の女が窓の外にいた。
(真っ黒というのは日焼けしたような肌ではなくて全身に墨を塗りたくったようなそういう真っ黒。
目がギョロっとしてて黒い肌とのコントラストで白目の部分がやけにくっきりして見えたのを覚えている)
そいつがヤモリみたいに窓にへばりついている。
不審者とか化物とかそいつが何者かなんて考える余裕がないというかただひたすら「えっえっえっなになになに」みたい感じになってたと思う。
そんな中真っ黒女が窓からすっと離れたと思ったらまた窓にバンとへばりついた。
振り子みたいな感じといったらいいのかな。上から吊るされて窓に向かってぶつかるみたいな。説明が難しい。

突如Bが「うわあああああああ」と叫び玄関から飛び出した。
俺もつられるように飛び出した。
AもCもあとに続いてアパートの階段を駆け下りたが、Cが足を滑らせて階段を踏み外した。
置いて逃げたかったけどCは片腕でほふく前進をしながら「待って~待って~」と号泣してるので俺とAで肩を貸してやりながら逃げた。
そして一番最初に目についたコンビニに避難。Bも先に逃げ込んでいた。
なんだあれ?!と話し合っても答えが出るわけもなく。
少し落ち着いてからみんなそれぞれ帰宅し、Aだけは俺の家に泊まった。

それからしばらくAの部屋に原稿やら画材やらカバンやら置きっぱなしだったんだけど、窓バン騒動から3日後くらいにラグビー部と柔道部の友達に付いてきてもらってみんなで荷物を取りに行った。
Aはその後引っ越した。荷造りはすべて業者にまかせてAは一歩も部屋に入らなかったらしい。
しばらくはその話題で盛り上がったけど、Cが階段から落ちたときに鎖骨を折っちゃってそれが神経を傷つけたとかで利き手が満足に動かせなくなった。
絵も描けなくなって漫研も退部。
Bは「祟りかもしれない」ってこの話を一切しなくなり、一つ上のAも就活やなんやらで忙しくなってあの日のことはなんとなく誰も話さなくなった。
長くなったけどここまでが前提。

大学を卒業してから15年くらい経った今年2月の終わり頃、Aと偶然再会した。
俺の仕事の取引先の担当がAだった。
卒業してから一回も会ってなかったからそれはそれは嬉しかったよ。
仕事が終わってから飲みに行ったんだけど話が例の窓バン騒動に。
「あれなんだったんですかね」「怖かったよなーw」と笑い話にしてたんだけど、どうもおかしい。
大体同じことを経験してるんだけどなんか違う。
例えば女の容姿。
俺が見たのは肌が墨のように真っ黒でボサボサのショートヘア。ボサボサすぎて髪が逆立ってる感じ。服装はノースリーブに短パンかミニスカートだったと思う。
手足も真っ黒だったから。

Aが見たというのは顔が半分潰れたおっさんだったと。
エメラルドグリーンの作業着を着てたって。
「絶対違うって!」ってお互いが主張して話が平行線。
俺が「じゃあBとCも呼んで話を聞きましょう」と提案。
Aは「は?なんでC?」と怪訝な顔。
いやいやCもいたでしょ、階段から落ちて歩けなくなったCを俺とAが肩を貸してコンビニに逃げたじゃないですか。
と説明しても「絶対Cはいなかった」と。
驚くことに「ていうか階段から落ちたのはお前だろ」と言う始末。
その後骨折したのが判明して××病院に入院。
漫研のみんなでお見舞いに行った。
サークルメンバーの腐女子がギプスにカードキャプターさくらに出てくる桃矢と雪兎のホモ絵を描いて、俺が「このあと家族が見舞いに来るのにどうするんだよw」って笑ってたらしくて、
嘘とか勘違いとは思えないほど詳しく言うA。
でも俺一回も骨折したことがないし入院もしたこともない。
(後日母親に確認したら間違いないって)

その他も細々と食い違うから、一度Bも呼んでもう一回会おうと約束。
それが果たされたのが先週の金曜日。
Bとも卒業してからほぼ会ってなかったから昔話に花が咲いた。 
で話は本題に。
もちろんBも窓バン騒動について覚えていた。
でも見たものは俺ともAとも違ってた。
Bが言うには髪の長い女の頭だけが窓にバンバンぶつかってたと。
最初は上の階の住人がマネキンの頭をぶら下げてイタズラしてるんだと思ったらしい。
でもマネキンだと思ってたものが歯をむき出しにしてニヤ~って笑ったのを見て急に怖くなり部屋を飛び出したと。

そしてその時いたメンバーに間違いなくCもいたって。
でも誰も階段から落ちてないし骨折もしてないと。
で、俺とAが「いやいやいや、お前が真っ先に部屋を飛び出したから誰かが階段から落ちたかどうかなんて分からんだろ」
と返したらBは「俺が一番最後に出た!」と言う。
窓がバンっと鳴って女の首を見た時点でわりとすぐにBを除く3人は部屋を飛び出したらしい。
Bはその時点ではマネキンだと思ってたから「おいおいビビりすぎだろ」と呆れてたって。
コンビニで落ち会ったのは共通の記憶。
でもそのあとの対処は三人とも違ってた。
A曰く「そのあとみんなで荷物と原稿を取りに行きBの家で原稿作業を再開」
B曰く「俺は兄貴とルームシェアをしてたから大学の四年間一度も誰も部屋に入れたことがない。それが兄貴との約束の地だったから。
窓バン騒動のあとみんなそれぞれ自分の家に帰った。荷物や原稿は翌日Aが持ってきてくれた」

三人が三人とも記憶が違うので意味がわからない。
昔すぎて忘れてしまったのか?
でもあの騒動のあとあいつが何者か話し合ってたときはたしかにみんなショートヘアの真っ黒女だって共通の認識だったんだよね。
AもBもそれについては同じで、
A「お前らもあの時作業着を着たおっさんだって話してたじゃん」
B「いやいやいやみんな女の首だと認識してた。Aだって『首吊りした女の霊かな』って考察してたじゃないですか!」
とお互い譲らない。
じゃあCを呼んで確かめようってなったけどAは絶対にいなかったって言うし、Cを呼んだところでまた別の話が出てきたら怖いので正直会う気がしない。
あんな強烈に怖かった出来事を俺は思い出さなかった日はないから自分の記憶に絶対的な自信があるんだけどそれはABも同じだろうし、なんでこんな食い違いが起きたんだろ



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